イントランス×ディライトワークス|PIPES応用型ファイナンスの実像と可能性
2025年5月、東証グロース上場企業である株式会社イントランス(証券コード:3237)は、非上場企業であるディライトワークス株式会社との間で資本業務提携に関する改訂覚書を締結しました。
本件の特徴は、プロ私募債の発行に加えて、ディライトワークス社による取締役2名の指名権が付帯している点にあります。これは形式上は社債ですが、実質的には上場株式の私募発行に近い構造を持っており、「PIPES応用型ファイナンス」と位置づけることができます。
PIPES(パイプス)とは何か?
PIPES(Private Investment in Public Equity)とは、上場企業が特定の投資家に対し、非公開で株式や新株予約権を発行し、資金調達を行うスキームです。ディスカウント発行や経営参画が伴う場合もあり、特に米国では広く利用されています。
イントランスの資金調達スキーム:PIPES応用型の構造
イントランスが採用したのは、「第1回無担保普通社債(プロ私募債)」による資金調達です。引受人はディライトワークス株式会社であり、覚書には「社債引受を条件に、取締役2名を指名する権利を付与」と明記されています。
このように、形式上は債券による調達でありながら、実質的には特定投資家の経営関与を伴うという点で、PIPES的性格を色濃く帯びていることがわかります。
主なPIPES的特徴
- 特定投資家による資金提供(私募)
- 経営権への関与(取締役指名)
- 事業戦略との整合性(地方創生・ホテル投資)
中長期の資本政策とファンド型提携
ディライトワークスはイントランスの議決権の約14.33%を保有する主要株主であり、今回のスキームによりさらに深く経営に関与することが可能となります。これは単なる資金提供にとどまらず、インバウンドや地方創生領域での協業を強化する“戦略的パートナーシップ”と位置付けることができます。
他のグロース企業にも波及の可能性
今回のイントランスのような「PIPES応用型」の資金調達スキームは、今後ますます注目を集める可能性があります。特に以下のようなニーズを持つ企業にとっては、有効な選択肢となり得ます:
- 赤字再建中で金融機関融資が限定的
- 中長期の投資が必要な成長分野に注力
- 資金調達だけでなく、外部知見を経営に取り入れたい
まとめ|PIPESの未来型としての進化
イントランスが実施した本件は、「株式ではなく社債を通じたPIPES的アプローチ」という、日本企業の資本戦略における新しいモデルを提示したものです。
今後、同様の事例が増えていけば、グロース市場における資金調達の柔軟性は大きく広がっていくことでしょう。

本件のような「擬似PIPESスキーム」に関心がある方は、ぜひ他の成功事例もご覧ください。
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