株式会社レナサイエンス、CVI Investments, Inc.への第三者割当による新株式及び新株予約権発行で約7.5億円を調達
2026年2月18日、東証グロース上場企業である株式会社レナサイエンス(証券コード: 4889)は、CVI Investments, Inc.を割当予定先とする第三者割当による新株式及び新株予約権の発行を発表した。本取引は、株式及び新株予約権発行プログラム設定契約に基づくものであり、総額757,004,744円の資金調達を企図する。これは、上場企業が特定の投資家から非公開で資金を調達するPIPES(Private Investment in Public Equity)取引の一類型として位置づけられる。
取引の詳細:新株式と新株予約権の複合型調達スキーム
本取引は、普通株式の第三者割当発行と新株予約権の第三者割当発行を組み合わせた複合的な資金調達スキームである。具体的な内訳は以下の通り。
- 発行株式数: 普通株式263,400株
- 1株あたり発行価格: 1,735円
- 新株予約権: 1,712個(潜在株式数171,200株)
- 新株予約権1個あたり発行価額: 1,737円
- 割当予定先: CVI Investments, Inc.(Heights Capital Management, Inc.が運用する米国の機関投資家)
- 払込期日: 普通株式および新株予約権ともに2026年3月5日
- 新株予約権行使期間: 2026年3月6日から2029年9月5日まで
本第三者割当による議決権ベースでの希薄化率は3.42%と開示されている。これにより、CVI Investments, Inc.は募集後の大株主リストにおいて5.59%の持株比率で新たにランクインする見込みである。
価格・条件の整理
本取引における発行価格および発行価額の算定根拠は以下の通りである。
- 普通株式の発行価格: 取締役会決議日の直前取引日(2026年2月17日)の東京証券取引所における当社普通株式の終値1,826円に対し、95%のディスカウント率を適用した1,735円。
- 新株予約権の発行価額: 第三者評価機関である株式会社赤坂国際会計によるモンテカルロ・シミュレーションを基礎とした評価額1,737円を参考に、割当予定先との協議を経て決定された1,737円。
- 払込期日: 2026年3月5日。
- 新株予約権の行使期間: 2026年3月6日から2029年9月5日まで。
業務提携・資金使途の内容
本取引は、株式会社レナサイエンスの将来の成長と安定的な財務基盤の構築を目的とした資金調達である。具体的な資金使途は以下の通りである。
- 希少がんの第III相試験及びがん適応拡大の第II相試験: 420百万円
- 抗加齢・長寿臨床試験(XPRIZE Healthspan試験): 179百万円
- 抗加齢疾患の非臨床試験及び動物医薬品開発: 143百万円
本取引における具体的な業務提携の内容については、開示資料において言及されていない。
株価・希薄化への影響分析
本第三者割当増資は、既存株主にとって株式の希薄化をもたらす可能性がある。
- 希薄化率: 第3回第三者割当による希薄化率は、議決権ベースで3.42%と算出されている。これは、発行済み株式総数に対して新規発行される株式の比率を示し、既存株主の持分比率がその分低下することを意味する。
- 発行価格と市場価格の関係: 普通株式の発行価格1,735円は、取締役会決議日直前取引日の終値1,826円に対して約5%のディスカウントが適用されている。これは、特定投資家へのインセンティブとして設定されることが一般的である。新株予約権の発行価額は、第三者評価機関の評価額と同額であり、適正な価格形成が図られたと評価できる。
- 既存株主への影響: 希薄化率が3.42%であることから、既存株主の1株当たり利益(EPS)や1株当たり純資産(BPS)は、理論上、同等の比率で希薄化する。しかし、調達資金が企業の成長戦略に有効活用され、将来的な企業価値向上に繋がる場合、中長期的には株価にポジティブな影響を与える可能性もある。今回の資金使途は、創薬開発における重要な臨床試験費用に充当されるため、その成果が期待される。
PIPES的位置づけの分析
PIPESの基本説明
PIPES(Private Investment in Public Equity)とは、上場企業が公開市場を通さず、特定の機関投資家やファンドから直接的に株式や新株予約権などの証券を発行し、資本を受け入れる取引の総称である。これは、迅速な資金調達、戦略的パートナーシップの構築、あるいは市場の変動リスクを回避する目的で利用されることが多い。PIPESは、発行形態によって様々な類型に分類される。
本件がPIPES的といえるポイント
株式会社レナサイエンスによる今回の資金調達は、以下の点から典型的なPIPES取引と位置づけることができる。
- 上場企業による資金調達: 株式会社レナサイエンスは東証グロース上場企業である。
- 特定の投資家への割当: CVI Investments, Inc.という特定の機関投資家に対して新株式及び新株予約権が割り当てられている。
- 非公開での募集: 公募増資とは異なり、特定の投資家との交渉を通じて募集が行われている。
- 新株式と新株予約権の組み合わせ: 新株式の発行に加え、将来の株式転換を伴う新株予約権も発行されており、これはPIPES取引でよく見られる形態である。
- 既存の契約に基づく実施: 「株式及び新株予約権発行プログラム設定契約」という既存の枠組みに基づいて実施されており、継続的な資金調達手段としての側面を持つ。
他のPIPES類型との比較
本件は、新株式の第三者割当と新株予約権の第三者割当を組み合わせた形態であり、PIPESの分類においては「第三者割当型」に該当する。特に、新株予約権が行使価額修正条項(MSワラント)を伴わない固定行使価額型である場合、一般的な第三者割当増資に近い性質を持つ。MSワラント型PIPESと比較すると、株価変動による発行会社側の希薄化リスクが限定的である一方で、投資家側のアップサイドも固定される点が異なる。本件では、発行価格が市場価格に対してディスカウントされているものの、MSワラントのような行使価額の変動条項は開示されていないため、より安定的な資金調達スキームとして整理できる。
証券用語ミニ解説
第三者割当増資とは
第三者割当増資とは、特定の第三者(企業、機関投資家、個人など)に新株を発行して資金を調達する方法である。公募増資のように広く一般から資金を募るのではなく、引受先を選定できるため、戦略的パートナーシップの構築や、特定の専門知識を持つ投資家からの資金調入れに適している。本件のように、特定の機関投資家を引受先とすることは、第三者割当増資の典型的な活用事例である。
新株予約権とは
新株予約権とは、あらかじめ定められた条件(行使期間、行使価額など)で、その会社の株式を取得できる権利をいう。資金調達の柔軟性を高める手段として活用され、発行時点では株式の希薄化を伴わず、行使された時点で資金調達が完了する。投資家にとっては、将来の株価上昇による利益獲得の機会を提供する一方で、発行会社にとっては、株価上昇時に追加の資金調達が期待できるメリットがある。
株式の希薄化とは
株式の希薄化とは、企業が新たに株式を発行することで、既存株主の持分比率が低下し、1株あたりの利益(EPS)や1株あたりの純資産(BPS)が減少する現象を指す。第三者割当増資や新株予約権の行使によって発生する。企業の成長に必要な資金調達の代償として避けられない側面があるが、その希薄化率や資金使途の妥当性が投資判断において重要となる。
まとめ
株式会社レナサイエンスによる今回の第三者割当増資及び新株予約権の発行は、創薬開発という資金需要の高い分野において、特定の機関投資家から安定的に資金を調達するPIPES取引の典型例である。約7.5億円という資金は、希少がんや抗加齢分野における重要な臨床試験費用に充当され、企業の成長戦略を加速させるものと期待される。既存株主にとっては一定の希薄化が生じるものの、発行価格のディスカウント率や資金使途の明確性から、中長期的な企業価値向上への貢献が注目される。
PIPESは、上場企業が市場環境に左右されにくい形で、迅速かつ戦略的に資金を調達できる有効な手段である。特に、成長ステージにある企業や、特定のプロジェクトに多額の資金を要する企業にとって、その活用は今後も増加していくと予測される。










この記事へのコメントはありません。