PIPES(パイプス)とは?|上場企業のための新しい資金調達スキーム
PIPESとは何か?
PIPES(パイプス)とは、Private Investment in Public Equityの略で、上場企業が特定の投資家に対して非公開で新株や新株予約権を発行することで、資金を調達する方法です。
日本語では「私募による上場株式の引受」と訳され、公開市場を通さず企業と投資家が直接取引を行う増資手法といえます。
基本構造と仕組み
この図は、PIPES(私募による上場株式の引受)の基本的な流れを示しています。
上場企業が特定の投資家と合意し、非公開で新株などを発行することで資金を調達する仕組みです。
通常の公募増資とは異なり、交渉の柔軟性が高く、スピーディな資金確保が可能な点が特徴です。
- 企業が条件を設計し、特定投資家と事前合意
- 新株または新株予約権を私募で発行
- 企業は資金を受け取り、投資家は株式転換権を得る
- ロックアップや転換条件がつく場合もある
PIPESが注目される理由
- 希薄化を最小限に抑える設計が可能
- 柔軟かつ迅速な資金調達が可能
- IR戦略と連動した資本政策に活かせる
- 東証グロース市場の成長企業でも導入事例が増加中
専門用語解説(リンク付き)
PIPESと他の資金調達手法との比較
PIPESをはじめとする主要な資金調達手法を、5つの視点から比較した表をご覧ください。
手法 | 希薄化リスク | スピード感 | 交渉柔軟性 | 市場影響 | 投資家との関係性 |
---|---|---|---|---|---|
📢 公募増資 | ×(大きい) | △(遅い) | ×(一律条件) | ×(高い) | ×(一過性) |
📄 第三者割当増資 | △(中程度) | △(普通) | △(やや柔軟) | △(中程度) | △(限定的) |
💳 転換社債(CB) | △(不確定) | ◎(早い) | △(条件付き) | ○(低め) | △(やや強い) |
🟦 PIPES(パイプス) | ◎(調整可能) | ◎(早い) | ◎(完全交渉) | ○(抑制可能) | ◎(中長期的) |
活用事例(国内外)
📌 事例1:東証グロース市場・IT企業A社
コロナ禍の影響で収益が一時的に悪化し、公募による増資が難しい状況に。
そこでA社は、特定のVCと交渉し「段階的に転換される新株予約権付きPIPESスキーム」を採用。
このスキームにより、初期段階では希薄化を最小限に抑え、一定の業績改善後に残りの株式を転換できる設計とした。
結果、投資家との信頼関係を維持しながら必要資金を確保し、株価も大きく下落せずに事業回復に成功した。
📌 事例2:再建中の製造業B社(スタンダード市場)
債務超過の危機に直面していたB社は、再建スポンサーとして名乗りを上げた事業会社とPIPESスキームを活用した資本提携を実施。
さらに、TOB(株式公開買付)を併用しながら、経営権を新パートナーに引き継ぎつつ段階的な増資による信用回復を図った。
結果として金融機関からの支援も再開され、約2年で黒字転換を果たした事例として業界内で注目を集めている。
📌 事例3:NASDAQ上場・バイオベンチャーC社(米国)
R&Dフェーズが長期化する中で、C社は複数回にわたりPIPESによる継続的な資金調達を実施。
各ラウンドで異なる投資家と交渉し、マイルストーンベースで条件を変更しながら柔軟な設計を行った。
この方法により、希薄化と投資家期待のバランスを取りつつ、安定した研究開発体制を維持。
PIPES活用の成功事例として、複数の金融誌に取り上げられた実績を持つ。
各事例に共通しているのは、「PIPES=単なる資金調達」ではなく、「経営戦略と一体化したファイナンス手法」として設計されたことです。
投資家との条件交渉やIR戦略と連携することで、PIPESは企業の可能性を広げるツールとなり得ます。
PIPESのリスクと注意点
- 条件交渉次第で経営支配リスクが高まる
- ディスカウント率が株価に影響する
- 開示制度や証券取引所ルールに正確な対応が必要
どんな企業に向いているか?
- 将来性ある事業を持つが株価が低迷している企業
- M&Aや新規事業のために柔軟な資金調達が必要な企業
- 経営権を保ちつつ、外部資金を導入したい経営者
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