最新の株式関連ニュース

山善、第三者割当で280億円調達|新株予約権型PIPESの戦略的活用

山善、アドバンテッジパートナーズ系ファンドへ転換社債型新株予約権付社債を第三者割当

2025年2月12日、東証プライム上場の株式会社山善(証券コード:8051)は、第三者割当により発行される第1回無担保転換社債型新株予約権付社債の募集を発表した。割当先はAP PS IV S1, L.P.で、総額280億6979万円の資金調達を計画している。本取引は、特定の機関投資家から非公開で資金を調達するPIPES(Private Investment in Public Equity)の一類型として位置づけられる。

取引の詳細

株式会社山善は、AP PS IV S1, L.P.に対し、第三者割当方式で第1回無担保転換社債型新株予約権付社債を発行する。本新株予約権付社債が全て転換された場合、発行される普通株式の総数は18,132,800株となる。

この転換により、AP PS IV S1, L.P.は募集後の大株主として17.47%の株式を保有することになる。本新株予約権付社債が転換価額1,543円により全て転換された場合、発行済株式総数に対する割合は19.03%、総議決権数に対する割合は21.18%に相当する。

価格・条件の整理

  • 取引種類: 第三者割当により発行される第1回無担保転換社債型新株予約権付社債の募集
  • 払込期日/割当日: 2026年3月3日
  • 取引金額: 28,006,979,000円
  • 割当先: AP PS IV S1, L.P.(所在地:ケイマン諸島、組成目的:投資)
  • 発行価格: 各社債の金額100円につき100.1円(赤坂国際による価値算定評価額の範囲内)
  • 転換価額: 1株当たり1,543円
  • 転換価額のプレミアム:
    • 2026年2月10日終値(1,503円)に対し2.66%のプレミアム
    • 1ヶ月終値平均(1,467円)に対し5.18%のプレミアム
    • 3ヶ月終値平均(1,470円)に対し4.97%のプレミアム
    • 6ヶ月終値平均(1,440円)に対し7.15%のプレミアム

業務提携・資金使途の内容

本取引は、アドバンテッジパートナーズとの事業提携と一体で実施される。山善は、アドバンテッジパートナーズの豊富なコンサルティング実績やネットワークを通じた経営支援を受けることを企図している。

調達資金の使途は以下の通りである。

  • 自己株式の取得(150億円): 経営環境の変化に対応した機動的な資本政策の遂行、資本効率の向上及び株主還元の充実を図るため(2026年3月~2027年3月)。
  • 事業拡大のためのM&A(120億円): 事業規模拡大を目的としたM&A資金として(2026年3月~2031年3月)。
  • 成長戦略加速投資(9億8500万円): 成長戦略を加速させるための投資として(2026年3月~2031年3月)。

株価・希薄化への影響分析

本新株予約権付社債が全て転換された場合、発行済株式総数95,305,435株(2025年9月30日現在)に対し、新たに18,132,800株が発行される。これにより、既存株主の持分比率は約19.03%希薄化することになる。また、総議決権数に対する希薄化率は約21.18%と算出される。

転換価額1,543円は、取締役会決議日前営業日終値に対してプレミアムが付与されており、市場価格よりも高い水準で設定されている。これは、投資家が山善の将来的な企業価値向上を評価していること、および新株予約権付社債という形式によるリスク調整が反映されていると解釈できる。しかし、将来的な転換による株式数増加は、1株当たりの利益(EPS)や株主価値に影響を与える可能性があるため、既存株主は今後の企業価値向上施策と株主還元策の進捗を注視する必要がある。

PIPES的位置づけの分析

PIPESの基本説明

PIPES(Private Investment in Public Equity)とは、上場企業が特定の機関投資家に対し、公開市場を介さずに株式や新株予約権、転換社債などを割り当てることで資金を調達する手法である。迅速な資金調達が可能であり、戦略的なパートナーシップ構築にも利用されることが多い。一般的に、公募増資に比べて柔軟な条件設定が可能である一方、既存株主の希薄化や株価への影響も考慮される。

本件がPIPES的といえるポイント

  • 上場企業による特定の投資家への割当: 東証プライム上場の山善が、特定の機関投資家であるAP PS IV S1, L.P.に対し、非公開で新株予約権付社債を割り当てている。
  • 戦略的パートナーシップの構築: 資金調達と同時にアドバンテッジパートナーズとの事業提携を締結し、経営支援やネットワーク活用を企図している。単なる資金調達に留まらない、戦略的な関係構築を目的としている点がPIPESの特徴と合致する。
  • 中長期的な成長資金の確保: 自己株式取得による資本政策の最適化に加え、M&Aや成長戦略加速投資といった中長期的な事業成長を見据えた資金使途が明確である。
  • 転換社債型新株予約権付社債の活用: 株式に直接転換される新株予約権付社債を用いることで、将来的な株式化を前提とした資本参加を促している。

他のPIPES類型との比較

本件は、新株予約権付社債の発行を伴うため、「新株予約権型PIPES」に分類される。これは、株式を直接割り当てる「普通株式型PIPES」や、行使価額が株価に連動して修正される「MSワラント型PIPES」とは異なる特徴を持つ。

「MSワラント型」が株価下落リスクを投資家側が負うことで、企業は資金調達の確実性を高める一方、既存株主の希薄化リスクが高いという側面があるのに対し、本件の「新株予約権型」は、転換価額が固定されており、一定のプレミアムが設定されている。これにより、企業は安定した資金調達が可能となり、投資家は将来的な株価上昇によるキャピタルゲインを期待できる構造となっている。

証券用語ミニ解説

第三者割当増資とは

第三者割当増資とは、特定の第三者に新株を発行して資金調達する方法である。公募増資と異なり引受先を選定できるため、戦略的パートナーシップ構築に適している。本件のように、特定の機関投資家との関係強化や経営支援の受け入れを目的として活用されることが多い。

新株予約権とは

新株予約権とは、あらかじめ定められた条件で株式を取得できる権利である。本件では、社債に新株予約権が付与された「新株予約権付社債」の形式で発行されている。資金調達の柔軟性を高める手段として活用され、権利行使により株式が発行されると、企業の資本が増強される。

株式の希薄化とは

株式の希薄化とは、新株発行により既存株主の持分比率が低下することである。発行済株式総数が増加するため、1株当たりの利益(EPS)や1株当たりの純資産(BPS)が低下する可能性がある。本件においても、新株予約権の行使により約19%の希薄化が発生する見込みであり、既存株主への影響として考慮される。

まとめ

株式会社山善による今回の第三者割当による新株予約権付社債の発行は、単なる資金調達に留まらず、アドバンテッジパートナーズとの戦略的提携を通じた企業価値向上を目指す、典型的なPIPESの活用事例と位置づけられる。自己株式取得による資本効率の向上と株主還元、そしてM&Aや成長投資といった中長期的な事業拡大を同時に追求する意図が明確である。

約280億円という大規模な資金調達は、山善が中期経営計画「PROACTIVE YAMAZEN 2027」で掲げる戦略ポイントを確実に遂行するための強力な推進力となるだろう。既存株主にとっては、一時的な希薄化は避けられないものの、戦略的パートナーシップによる事業成長と将来的な企業価値向上への期待が、この取引の評価を左右する重要な要素となる。PIPESは、上場企業が外部の知見と資本を効果的に取り込み、持続的な成長を実現するための有効な手段として、今後もその活用が注目される。

PIPESについてもっと詳しく知りたい方へ

PIPESの仕組みや活用方法について、詳しくはPIPES(パイプス)とは?をご覧ください。

ご質問やご相談はお問い合わせページからお気軽にどうぞ。

関連記事一覧

  1. 株式会社ベクターホールディングス、約9.4億円の第三者割当増資を実施
  2. 学びエイド,PIPES,資本業務提携,第三者割当,
  3. イントランス×ディライトワークス|PIPES応用型ファイナンスの実像
  4. 堀田丸正の行へは?
  5. PIPESとは何か?ネット・暗号資産分野で進む日本型PIPES資金調達の実例
  6. 北浜キャピタル、PIPESによる68億円調達完了──その真の狙いとは

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP