近年、日本の上場企業において、ネット・暗号資産(Web3)関連事業へ大きく舵を切る動きが目立ち始めています。
その中で注目されているのが、公開市場に依存しない資金調達手法=PIPES(Private Investment in Public Equity)的スキームです。
本記事では、ネット・暗号資産領域とPIPESの親和性、そしてその具体例として
株式会社エス・サイエンス(東証スタンダード)の事例をもとに、実務的な視点で整理します。
なぜネット・暗号資産事業はPIPESと相性が良いのか
ネット・暗号資産関連事業には、従来型ビジネスと異なる特徴があります。
- 初期投資額が大きく、回収まで時間がかかる
- 規制・制度変更の影響を受けやすい
- 事業の成否が「将来価値」に大きく依存する
- 短期的な業績では評価されにくい
このような特性を持つ事業において、通常の公募増資や市場での資金調達は、
- 株価への過度なインパクト
- 既存株主の強い希薄化懸念
- 短期目線の投資家流入
といった問題を引き起こしやすくなります。
そこで選択されやすいのが、特定の理解ある資金提供者を想定したPIPES型スキームです。
事例解説|エス・サイエンスの「トレジャリー型PIPES」スキーム
エス・サイエンスは、従来の事業領域から大きく転換し、
暗号資産を軸としたトレジャリー戦略(Digital Asset Treasury)を中核に据える方針を示しました。
その資金調達手段として採用されたのが、以下の特徴を持つスキームです。
① 株主割当による非上場・新株予約権の無償発行
- 既存株主に対して無償で新株予約権を割当
- 新株予約権は非上場
- 行使時のみ会社に資金が流入
形式上は「株主割当」ですが、
実質的にはPIPESと同様の私募的性格を持ちます。
② 行使価額は市場価格の50%
新株予約権の行使価額は、基準日前取引日の終値の50%に設定。
これは、
- 行使インセンティブを明確に与える
- 短期間での資金流入を促す
という点で、ファンド向けPIPESと極めて近い設計です。
③ 想定調達額は最大約240億円規模
すべての新株予約権が行使された場合、
約240億円規模の資金調達が可能とされています。
この資金は、主に
- 暗号資産トレジャリーの構築
- 新たなネット・デジタル資産関連事業
に充当される計画です。
このスキームが「PIPES事例」として重要な理由
エス・サイエンスの事例が示しているのは、次の点です。
- 日本市場でもPIPES的設計は十分に可能
- 公募を使わずに大規模資金を調達できる
- 事業転換(ネット・暗号資産)と資本政策を同時に設計できる
特に注目すべきは、「市場で集める」のではなく、「理解ある主体に資金を委ねる」
という思想です。
これは、ネット・暗号資産のように
- 短期評価が難しい
- 中長期の構想が重要
な事業ほど、極めて合理的な選択と言えます。
PIPESサイト視点での位置づけ
本事例は、pipes.jp において次のような位置づけが可能です。
- ネット・暗号資産関連PIPES事例
- トレジャリー戦略型PIPES
- 日本型・制度内PIPESの応用事例
「ファンドが主役のPIPES」だけでなく、
事業転換を目的としたPIPESを解説するうえで、非常に示唆に富むケースです。
まとめ
ネット・暗号資産領域では、
資金調達の巧拙が事業成否を分けると言っても過言ではありません。
エス・サイエンスの事例は、
日本市場におけるPIPES活用の現実解を示しています。
今後、同様のスキームを採用するネット関連企業が増える可能性は高く、
PIPESは「例外的手法」ではなく「戦略的選択肢」として定着していくでしょう。











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