PIPEs・資本戦略レポート

アンジェスがGPファンドから約85億円調達|潜在株式1.83億株の大型PIPES

アンジェスがGPファンドから約85億円を調達する大型PIPES

アンジェス株式会社(4563・東証グロース)は2026年8月14日17時15分、GP上場企業出資投資事業有限責任組合を割当先とする大型資金調達を発表しました。

今回発行されたのは、行使価額修正条項付の第47回新株予約権、固定行使価額型の第48回新株予約権、第2回無担保転換社債型新株予約権付社債の3種類です。

調達予定額は発行諸費用控除前で約85億円、8月25日の訂正開示を反映した差引手取概算額は8,196,132,315円です。

すべての新株予約権が行使され、転換社債型新株予約権付社債が転換された場合の潜在株式数は合計182,976,511株。開示上の希薄化率は45.88%に達します。

今回の資金調達の要点

  • 会社名:アンジェス株式会社
  • 証券コード:4563
  • 市場:東証グロース
  • 開示日時:2026年8月14日17時15分
  • 訂正開示:2026年8月25日16時00分
  • 割当先:GP上場企業出資投資事業有限責任組合
  • 調達予定額:8,500,002,315円
  • 差引手取概算額:8,196,132,315円
  • 潜在株式数:182,976,511株
  • 希薄化率:45.88%

アンジェスが発行した3種類の証券

今回の資金調達では、条件の異なる2種類の新株予約権と、転換社債型新株予約権付社債が組み合わされています。

証券 潜在株式数 行使・転換価額 調達予定額
第47回新株予約権 79,633,700株 当初50円・下限25円 約40億円
第48回新株予約権 57,365,800株 43.5円・固定 約25億円
第2回無担保転換社債型新株予約権付社債 45,977,011株 43.5円・固定 20億円
合計 182,976,511株 約85億円

第47回新株予約権はMSワラント型

第47回新株予約権は、行使価額が株価に連動して修正される、いわゆるMSワラント型です。

当初行使価額は50円。2026年9月1日以降は、原則として各行使請求日の直前取引日の終値の90%に相当する金額へ修正されます。ただし、下限行使価額は25円で、上限は設定されていません。

株価が上昇すれば調達額が当初想定を上回る可能性がある一方、株価が低迷すれば行使価額が下がり、実際の調達額が想定を下回る可能性があります。

MSワラントの仕組みや株価への影響はこちらの記事で詳しく解説しています。

第48回新株予約権は固定行使価額型

第48回新株予約権の行使価額は1株43.5円で、株価に連動する修正はありません。

潜在株式数は57,365,800株、行使期間は2026年9月1日から2031年8月31日までです。第47回とは異なり、将来の市場株価が変動しても、通常は行使価額と潜在株式数が変わらない設計です。

CBにより20億円を先行調達

第2回無担保転換社債型新株予約権付社債の発行総額は20億円です。転換価額は1株43.5円、潜在株式数は45,977,011株で、転換価額の修正条項はありません。

利率は年0.75%、償還期日は2031年8月31日です。新株予約権は実際に行使されるまで資金が入らないのに対し、CB部分の20億円は払込時点で調達できる点が重要です。

潜在株式約1.83億株、希薄化率は45.88%

第47回と第48回新株予約権の潜在株式数は合計136,999,500株です。これにCBの潜在株式45,977,011株を加えると、最大潜在株式数は182,976,511株となります。

アンジェスが希薄化率の分母としている2026年6月30日時点の発行済株式総数は398,835,550株です。

182,976,511株 ÷ 398,835,550株 × 100 = 約45.88%

25%を大きく上回るため、本件は東京証券取引所の規則上、大規模な第三者割当に該当します。アンジェスは第三者委員会を設置し、資金調達の必要性と相当性について意見を取得しています。

希薄化率の計算方法や発行前基準と発行後基準の違いは、希薄化率の計算方法を解説した記事をご覧ください。

45.88%はGPファンドの現在の普通株保有率ではない

今回の45.88%という数字は、GPファンドが現時点でアンジェスの普通株式を45.88%保有しているという意味ではありません。

第47回・第48回新株予約権がすべて行使され、CBがすべて普通株式へ転換された場合に発生する潜在株式を、発行前の株式数と比較した希薄化率です。

新株予約権は行使されるまで普通株式にならず、CBも転換されるまで普通株式にはなりません。そのため、潜在株式数、実際に発行された普通株式数、EDINET上の株券等保有割合は区別して確認する必要があります。

資金使途はHGF遺伝子治療薬の米国開発など

資金使途 予定額
旧第2回無担保社債の償還 6.30億円
慢性動脈閉塞症のHGF遺伝子治療薬の米国開発 35億円
EmendoBio社の研究開発拠点移転 10億円
その他の研究開発費を含む運転資金 約30.66億円
合計 約81.96億円

中心となる資金使途は、慢性動脈閉塞症を対象とするHGF遺伝子治療用製品の米国開発です。原薬・製剤の調達や、生物製剤認可申請(BLA)の準備費用などに35億円を充当する予定です。

また、子会社EmendoBio Inc.の研究開発機能をイスラエルから米国カリフォルニア州パロアルトへ移転する費用として10億円を予定しています。

旧第46回MSワラントから新スキームへ再編

今回の案件は、単純に新しいワラントを追加しただけではありません。

アンジェスは、Cantor Fitzgerald Europeを割当先として2025年11月に発行した第46回新株予約権について、2026年9月15日時点の残存分を取得し、消却する予定です。

また、第46回新株予約権の行使代金を償還原資とする旧第2回無担保社債については、残存額6億3,000万円を2026年9月1日に償還しました。

資本政策の流れを整理すると、次のようになります。

  1. Cantor Fitzgerald Europe向け第46回MSワラントを整理
  2. 旧無担保社債ファシリティーを終了
  3. GPファンド向け第47回MSワラントを発行
  4. 固定行使価額型の第48回ワラントを発行
  5. 固定転換価額型CBで20億円を先行調達

つまり本件は、旧ファイナンスを整理しながら、MSワラント、固定ワラント、CBを組み合わせた新しい資金調達へ移行するリファイナンス型の大型PIPESと評価できます。

なお、第47回新株予約権の割当日は8月31日、第46回新株予約権の取得・消却予定日は9月15日です。そのため、8月31日から9月15日までの間は新旧ワラントが一時的に併存します。

GPファンドとの事業提携も同時に実施

割当先のGP上場企業出資投資事業有限責任組合は、グロースパートナーズ株式会社が管理・運営する投資ファンドです。

アンジェスは資金調達と同時にグロースパートナーズとの事業提携契約も締結しました。したがって今回の取引は、単なる証券投資だけでなく、財務基盤の安定化と事業価値向上に向けた支援を組み合わせた案件として見る必要があります。

今後は「GP上場企業出資投資事業有限責任組合とは?」を投資家データベースとして整備し、アンジェス、ビープラッツ、ヴィレッジヴァンガードなどの代表案件を追跡します。

PIPESとしての注目点

  • 調達予定額が約85億円に達する大型案件
  • 潜在株式約1.83億株、希薄化率45.88%
  • MSワラント、固定ワラント、CBを組み合わせた設計
  • CBによって20億円を先行調達
  • 旧第46回MSワラントと社債ファシリティーを整理
  • 新旧ワラントが一時的に併存
  • GPファンドとの事業提携を同時に実施
  • 資金使途の中心はHGF遺伝子治療用製品の米国開発

まとめ

アンジェスは、GP上場企業出資投資事業有限責任組合を割当先として、第47回MSワラント、第48回固定行使価額型新株予約権、固定転換価額型CBを組み合わせた約85億円の資金調達を実施しました。

潜在株式数は合計182,976,511株、希薄化率は45.88%です。ただし、この数字はGPファンドの現在の普通株保有率ではなく、すべて行使・転換された場合の潜在希薄化率です。

今後は、第47回MSワラントの行使状況、実際の調達額、GPファンドの株券等保有割合、取得株式の処分状況、HGF遺伝子治療用製品の米国開発への資金充当を継続して確認する必要があります。


開示資料

本記事は公表資料を基に資金調達の構造を整理したものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。

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