PIPEs・資本戦略レポート

レナサイエンス、CVIへ第三者割当で約7.57億円調達

サンエスパイプス事例

株式会社レナサイエンス(証券コード:4889)は、2026年2月18日、CVI Investments, Inc.を割当予定先とする第三者割当による新株式および第6回新株予約権の発行を発表しました。

本件は、2025年11月に締結された株式及び新株予約権発行プログラム設定契約に基づく第3回目の発行です。普通株式の第三者割当と新株予約権を組み合わせ、払込金額総額は757,004,744円、差引手取概算額は742,004,744円とされています。

上場企業が特定の機関投資家から資金を受け入れるという意味では、PIPES的な第三者割当スキームとして整理できます。ただし、本記事では、開示資料で確認できる事実をもとに、調達条件、資金使途、希薄化率、既存株主への影響を中心に整理します。

レナサイエンスの第三者割当の概要

発行会社 株式会社レナサイエンス
証券コード 4889
市場 東証グロース
割当予定先 CVI Investments, Inc.
発行形態 普通株式および第6回新株予約権の第三者割当
普通株式の発行数 263,400株
普通株式の発行価額 1株につき1,735円
新株予約権の総数 1,712個
潜在株式数 171,200株
新株予約権の行使価額 1株につき1,735円
払込金額総額 757,004,744円
差引手取概算額 742,004,744円
普通株式の払込期日 2026年3月5日
新株予約権の割当日 2026年3月5日
新株予約権の行使期間 2026年3月6日から2029年9月5日まで

調達資金の使途

レナサイエンスは、本第三者割当により調達する差引手取概算額742百万円について、主に創薬開発および抗加齢・長寿領域の研究開発費に充当する予定としています。

資金使途 金額 支出予定時期
希少がんの第III相試験およびがん適応拡大の第II相試験 420百万円 2026年6月〜2029年3月
抗加齢・長寿臨床試験(XPRIZE Healthspan試験) 179百万円 2026年8月〜2029年3月
抗加齢疾患の非臨床試験および動物医薬品開発 143百万円 2026年6月〜2029年3月
合計 742百万円

開示資料上、本件は業務提携ではなく、研究開発資金を確保するための資金調達として整理されています。そのため、記事上でも「業務提携によるシナジー」ではなく、「研究開発資金の確保」「財務基盤の強化」「創薬パイプラインへの投資」という観点で見るのが自然です。

発行価額とディスカウントの整理

普通株式の発行価額は1株につき1,735円です。これは、発行条件決定に係る取締役会決議日の直前取引日における終値1,826円の95%に相当する金額として設定されています。

ここで注意したいのは、「95%のディスカウント」ではないという点です。正しくは、直前終値の95%で発行するため、直前終値に対してはおおむね5%のディスカウントという整理になります。

また、新株予約権の発行価額は1個あたり1,737円とされており、第三者評価機関である株式会社赤坂国際会計による評価を参考に決定されています。会社側は、普通株式および新株予約権の発行条件について、割当予定先に特に有利な金額には該当しないものと判断しています。

希薄化率は3.42%、プログラム全体では13%台

本第3回第三者割当により発行される普通株式263,400株と、新株予約権がすべて行使された場合に交付される171,200株を合算すると、総株式数は434,600株となります。

レナサイエンスは、2025年9月30日現在の発行済株式総数および議決権数を分母とした希薄化率について、株式数ベースで3.42%、議決権ベースでも3.42%に相当すると開示しています。

一方で、本件は単発の第三者割当ではなく、株式及び新株予約権発行プログラムの第3回目にあたります。プログラム全体では、すべての普通株式発行および新株予約権行使を前提とした希薄化率は13.83%、議決権ベースでは13.84%とされています。

したがって、既存株主が見るべきポイントは、第3回単体の希薄化率だけではありません。プログラム全体でどの程度の株式増加が見込まれるか、調達資金がどの事業に使われるか、今後の開発進捗によって企業価値の向上につながるかを合わせて確認する必要があります。

MSワラントとの違い:市場価格連動型とは分けて見る

本件には新株予約権が含まれていますが、開示資料上、行使価額は1株につき1,735円とされています。

一般に、MSワラントは株価に応じて行使価額が修正される仕組みを持つ新株予約権を指すことが多く、株価下落局面で希薄化懸念が強まりやすい点が特徴です。

本件については、少なくとも開示されている概要上、行使価額が市場価格に連動して継続的に修正されるタイプとしては整理しにくく、記事上では「MSワラント」と断定するよりも、「普通株式と新株予約権を組み合わせた第三者割当スキーム」と表現する方が安全です。

ただし、新株予約権である以上、将来行使された場合には追加の株式発行が生じます。そのため、既存株主にとっては、行使状況、株価水準、出来高、資金使途の進捗を継続的に確認する必要があります。

PIPES的に見るポイント

PIPESとは、上場企業が公開市場で広く募集するのではなく、特定の投資家に対して株式や新株予約権などを発行し、資金を調達する手法の総称です。

今回のレナサイエンスの資金調達は、以下の点でPIPES的な性格を持つと整理できます。

  • 東証グロース上場企業による資金調達であること
  • CVI Investments, Inc.という特定の機関投資家を割当予定先としていること
  • 普通株式と新株予約権を組み合わせていること
  • 研究開発資金を目的とした資本調達であること
  • 公募増資ではなく、第三者割当の方法による発行であること

一方で、本件は業務提携や資本業務提携を伴う戦略投資というよりも、創薬開発に必要な資金を確保するための金融投資家向け資本調達として見る方が実態に近いと考えられます。

既存株主が確認すべきポイント

本件を見るうえで、既存株主が確認すべきポイントは大きく4つあります。

1. 第3回単体ではなくプログラム全体の希薄化率を見る

第3回第三者割当単体の希薄化率は3.42%ですが、プログラム全体では13%台の希薄化が想定されています。単発の数字だけでなく、プログラム全体の資本政策として見る必要があります。

2. 資金使途が研究開発に集中している

調達資金は、希少がん、抗加齢・長寿臨床試験、動物医薬品開発などに充当される予定です。これらは将来の成長要因になり得る一方、研究開発の進捗には時間と不確実性があります。

3. 発行価額は直前終値に対して約5%ディスカウント

普通株式の発行価額は、直前取引日の終値1,826円の95%に相当する1,735円です。大幅なディスカウントではありませんが、既存株主にとっては発行条件の妥当性を確認する重要なポイントです。

4. 新株予約権の行使タイミング

新株予約権は発行時点でただちに全株式が増えるわけではありません。実際の希薄化は、今後の行使状況によって段階的に発生します。そのため、今後の行使開示や大量保有報告書の動きも確認対象になります。

まとめ

レナサイエンスによるCVI Investments, Inc.への第三者割当は、普通株式と新株予約権を組み合わせた資金調達スキームです。払込金額総額は約7.57億円、差引手取概算額は約7.42億円で、主に希少がんや抗加齢・長寿領域の研究開発資金に充当される予定です。

第3回第三者割当単体の希薄化率は3.42%ですが、プログラム全体では13%台の希薄化が想定されています。そのため、既存株主にとっては、今回の発行単体だけでなく、プログラム全体の資本政策として確認することが重要です。

本件は、上場バイオベンチャーが特定の機関投資家から研究開発資金を調達するPIPES的な第三者割当事例として見ることができます。ただし、投資判断にあたっては、希薄化率だけでなく、資金使途、研究開発の進捗、新株予約権の行使状況を継続的に確認する必要があります。

PIPES・第三者割当増資について詳しく知りたい方へ

PIPESの基本的な仕組みは、PIPES(パイプス)とは?で詳しく解説しています。

第三者割当増資の仕組みは、第三者割当増資とはをご覧ください。

希薄化率の計算方法は、希薄化率の計算方法で整理しています。

免責事項:本記事は、公開情報に基づき資本政策・第三者割当増資の内容を整理したものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断は、必ず最新の開示資料およびご自身の判断に基づいて行ってください。

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