株式会社WIZE(証券コード:3664)は、2026年5月15日付で、EVO FUNDを割当予定先とする第三者割当による第39回新株予約権の発行を発表しました。
本新株予約権は、行使価額修正条項付の新株予約権です。一般的には、いわゆるMSワラント型の資金調達として整理されるスキームです。
今回の案件で特に注目すべきなのは、調達予定額が約19.66億円、潜在株式数が60,000,000株、すべて行使された場合の希薄化率が70.89%とされている点です。しかも、調達資金の使途は運転資金や借入返済ではなく、暗号資産ソラナの追加取得です。
つまり本件は、単なる資金繰り目的の第三者割当ではなく、WIZEがソラナ・トレジャリー事業へ大きく踏み込むためのEVO FUND案件として読む必要があります。
本記事では、WIZEのEVO FUND向け第39回新株予約権について、スキーム、希薄化率、資金使途、既存株主への影響、今後見るべきポイントを整理します。
- WIZEはEVO FUNDを割当先とする第39回新株予約権を発行予定
- 潜在株式数は60,000,000株
- 調達予定額は約19.66億円
- すべて行使された場合の希薄化率は70.89%
- 資金使途はソラナ・トレジャリー事業における暗号資産ソラナの追加取得
- EVO FUNDは純投資目的で、取得株式を原則として長期保有しない方針
- 暗号資産トレジャリー型のPIPES案件として、かなり特殊な事例
WIZEがEVO FUND向けに第39回新株予約権を発行
WIZEは、2026年5月15日開催の取締役会において、EVO FUNDを割当予定先とする第三者割当による第39回新株予約権の発行を決議しました。
開示によると、発行される新株予約権は600,000個であり、本新株予約権1個につき100株を目的株式とします。したがって、潜在株式数は60,000,000株です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社WIZE |
| 証券コード | 3664 |
| 市場 | 東証グロース |
| 発行決議日 | 2026年5月15日 |
| 割当予定先 | EVO FUND |
| 新株予約権 | 第39回新株予約権 |
| 新株予約権数 | 600,000個 |
| 潜在株式数 | 60,000,000株 |
| 調達予定額 | 1,966,330,000円 |
| 当初行使価額 | 33円 |
| 下限行使価額 | 17円 |
| 行使期間 | 2026年6月2日から2027年6月2日まで |
| 資金使途 | ソラナ・トレジャリー事業における暗号資産ソラナの追加取得 |
本件は、EVO FUNDを割当先とする行使価額修正条項付新株予約権であり、PIPES.jpでは、PIPES型の第三者割当・MSワラント型ファイナンスとして整理します。
なぜWIZEは資金調達を行うのか
WIZEは、2026年4月1日付で商号を株式会社WIZEへ変更し、これを「第二の創業」と位置づけています。
会社側の説明では、今後の事業構造として、暗号資産ソラナを軸とする財務・Web3領域、衣・食・音を中心とするエンターテインメント領域、SIAPによる拡張戦略を掲げています。
その中でも、今回の資金調達で最も重要なのは「ソラナ・トレジャリー事業」です。
WIZEは、調達資金の全額をソラナの追加取得に充当する方針です。これは、単に暗号資産を買って値上がりを待つという説明ではなく、自社バリデータ「WIZE Validator」の運用やステーキング報酬を通じた収益機会の拡大を狙うものとされています。
つまり、今回のEVO FUND案件は、財務改善のための資金調達という側面に加え、WIZEが暗号資産トレジャリー企業としてのポジションを強めるための資本政策と見ることができます。
資金使途はソラナ取得に全額充当
今回の調達資金の具体的な使途は、非常に明確です。
| 具体的な使途 | 金額 | 支出予定時期 |
|---|---|---|
| ソラナ・トレジャリー事業の拡大のための暗号資産ソラナの取得 | 1,966百万円 | 2026年6月から2027年6月 |
| 合計 | 1,966百万円 | - |
通常、EVO FUND案件では、運転資金、借入返済、研究開発費、M&A資金などが資金使途になることが多くあります。
しかし、WIZEの本件では、手取概算額の全額をソラナ取得へ充当する方針です。この点が、今回の案件をかなり特徴的にしています。
見方を変えると、既存株主にとっては「70%超の希薄化を受け入れる代わりに、WIZEがソラナ・トレジャリー戦略で企業価値を高められるか」を見る案件です。
そのため、今後は新株予約権の行使状況だけでなく、ソラナ取得の進捗、保有SOL数、ステーキング収益、ソラナ価格の変動、会計上の評価損益も確認する必要があります。
希薄化率70.89%はかなり大きい
本件で最も大きな論点は、希薄化率です。
WIZEの開示では、本新株予約権がすべて行使された場合に交付される株式数は60,000,000株です。これに対し、2025年12月31日時点の発行済株式総数は84,638,408株とされています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 発行済株式総数 | 84,638,408株 |
| 本新株予約権による潜在株式数 | 60,000,000株 |
| 発行済株式総数に対する希薄化率 | 70.89% |
| 議決権ベースの希薄化率 | 70.90% |
70%超の希薄化率は、既存株主にとって非常に大きなインパクトがあります。
もちろん、新株予約権は一度に全株式が発行されるわけではなく、行使が進むにつれて段階的に株式が増える仕組みです。ただし、最終的にすべて行使された場合には、既存株主の持分比率は大きく低下します。
このため、本件は単に「ソラナ関連の成長資金」として見るだけでは不十分です。ソラナ・トレジャリー戦略による企業価値向上が、70%超の希薄化を上回るリターンを生めるかどうかが最大の焦点になります。
行使価額修正条項付のMSワラント型スキーム
本新株予約権の当初行使価額は33円です。
ただし、本新株予約権には行使価額修正条項が付いています。行使価額は、割当日の2取引日後に初回の修正が行われ、その後は5取引日が経過するごとに修正されます。
修正後の行使価額は、価格算定期間におけるWIZE株式の終値のうち最も低い値の100%に相当する金額とされています。ただし、下限行使価額は17円です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 当初行使価額 | 33円 |
| 行使価額の修正 | 割当日の2取引日後に初回修正、その後5取引日ごとに修正 |
| 修正基準 | 価格算定期間の終値のうち最も低い値の100% |
| 下限行使価額 | 17円 |
| 上限行使価額 | なし |
一般的なMSワラントでは、市場株価に対して一定のディスカウントが設定されることがあります。
一方、WIZEの本件では、開示上、ディスカウントは行われない設計とされています。この点は既存株主への配慮として説明されています。
ただし、価格算定期間中の最も低い終値を基準とするため、株価が下落局面にある場合には、行使価額も低下しやすくなります。そのため、既存株主としては、行使価額の推移、行使数量、株価水準をセットで見る必要があります。
EVO FUNDは長期保有目的ではない
WIZEの開示では、EVO FUNDの保有方針についても説明されています。
EVO FUNDは純投資を目的としており、本新株予約権の行使により取得するWIZE普通株式を原則として長期間保有する意思はないとされています。また、取得した株式については、株価推移を見ながら、基本的に市場内で売却する方針とされています。
ここはかなり重要です。
事業会社による資本業務提携型の第三者割当であれば、割当先が長期保有し、事業シナジーを追求するケースがあります。しかし、本件のEVO FUNDは純投資目的です。
そのため、行使によって取得された株式が市場で売却される場合、株価の上値を抑える需給要因になる可能性があります。
もちろん、会社側はマーケットへの影響を勘案する方針と説明していますが、既存株主としては、EVO FUNDによる行使と売却の進捗を継続的に確認する必要があります。
WIZEは以前にもEVO FUNDへ新株予約権を割り当てている
今回のWIZE案件は、EVO FUNDの初登場案件ではありません。
開示によると、WIZEは2025年10月20日に、第36回新株予約権及び第37回新株予約権をEVO FUNDに割り当てています。また、第36回新株予約権及び第37回新株予約権については行使済みとされています。
つまり、今回の第39回新株予約権は、WIZEにとってEVO FUND再登板の資金調達です。
この点は、PIPES案件を見るうえで重要です。EVO FUND案件では、最初の割当だけで終わらず、行使完了後に追加のファイナンスが行われるケースがあります。
WIZEの場合も、過去の新株予約権の行使状況、今回の第39回新株予約権の行使進捗、今後さらに追加調達があるかどうかを追う必要があります。
貸株の存在も見る必要がある
今回の開示では、貸株に関する記載もあります。
具体的には、藪考樹氏からEVO FUNDに対する株式貸借契約について、貸借株数の上限が4,070,800株、貸借料は年率0%、担保なしとされています。
MSワラント型の資金調達では、貸株の存在が需給面の論点になることがあります。新株予約権の行使、取得株式の売却、貸株の返還がどのように進むかによって、株価への影響が変わるためです。
そのため、WIZE株を見る場合には、単に「EVO FUNDに割り当てた」という情報だけでなく、貸株、行使、売却、保有割合の変化をまとめて確認する必要があります。
25%超の大規模な第三者割当に該当する
本件は、希薄化率が70.89%であるため、25%を大きく超える大規模な第三者割当に該当します。
上場会社が25%以上の希薄化を伴う第三者割当を行う場合、取引所ルール上、経営者から一定程度独立した者による必要性及び相当性に関する意見の入手、または株主総会決議等による株主意思確認手続きが必要になります。
WIZEは、今回の資金調達について、第三者委員会から必要性及び相当性に関する意見を取得する形を採用しています。
第三者委員会は、希薄化の規模が相当大きいことを前提にしつつ、ソラナの戦略的保有による収益源の多角化が企業価値向上や中長期的な業績拡大に寄与する可能性を踏まえ、本資金調達には一定の合理性があるとの趣旨で判断しています。
ただし、これは「株価が上がる」という意味ではありません。第三者委員会の意見は、資金調達の必要性・相当性に関する手続き上の判断であり、投資成果を保証するものではありません。
本件の読みどころは「暗号資産トレジャリー×EVO FUND」
WIZEの案件は、通常の再建型MSワラントとは少し性質が異なります。
最大の読みどころは、調達資金のほぼ全額がソラナ取得に向かうことです。
近年、上場企業がビットコインや暗号資産を財務戦略に組み込む事例が増えています。WIZEは、その流れの中で、ソラナを軸にしたトレジャリー戦略を打ち出している企業といえます。
一方で、暗号資産価格は大きく変動します。ソラナ価格が上昇すれば、WIZEの財務・評価面にプラスの影響が出る可能性がありますが、下落した場合には評価損や投資家心理の悪化につながる可能性もあります。
その意味で、本件は「資金調達の成否」だけでなく、「調達した資金で取得するソラナの価格変動リスク」まで含めて見る必要があります。
既存株主が確認すべきポイント
WIZEのEVO FUND案件を見るうえで、既存株主が確認すべきポイントは以下です。
- 第39回新株予約権の行使がどのペースで進むか
- 行使価額がどの水準で修正されるか
- 下限行使価額17円に近づく場面があるか
- EVO FUNDが取得した株式をどの程度市場で売却するか
- 貸株の状況に変化があるか
- ソラナの取得が予定どおり進むか
- 保有ソラナからのステーキング収益がどの程度出るか
- ソラナ価格の変動が財務にどう影響するか
- 上場維持基準への適合に向けた進捗があるか
- 今後さらに追加のエクイティ・ファイナンスが出る可能性があるか
特に重要なのは、行使状況とソラナ取得状況です。
新株予約権が行使されなければ、会社は想定どおりの資金を調達できません。一方で、行使が進めば株式数は増え、既存株主の持分は希薄化します。
このトレードオフをどう評価するかが、本件の核心です。
WIZE案件はPIPES型ファイナンスとしてどう見るべきか
PIPESとは、上場企業が公開市場を通じた公募増資ではなく、特定の投資家を割当先として資金調達を行うスキームです。
WIZEの本件は、EVO FUNDを割当先とする第三者割当による新株予約権発行であり、公開市場ではなく特定投資家から資金調達を行う点で、PIPES型の資金調達として整理できます。
ただし、一般的な資本業務提携型PIPESとは異なり、EVO FUNDは純投資目的です。したがって、事業シナジーよりも、行使条件、株価推移、流動性、売却方針、資金使途の妥当性を中心に読むべき案件です。
また、本件はソラナ取得という明確な成長投資テーマを持つ一方で、70%超の希薄化を伴います。このバランスが、市場評価を大きく左右すると考えられます。
まとめ:WIZEはソラナ・トレジャリーに振り切ったEVO FUND案件
WIZEのEVO FUND向け第39回新株予約権は、かなり特徴の強いPIPES型ファイナンスです。
潜在株式数は60,000,000株、調達予定額は約19.66億円、希薄化率は70.89%です。通常の第三者割当と比べても、既存株主への影響は大きい案件といえます。
一方で、資金使途はソラナ・トレジャリー事業における暗号資産ソラナの追加取得に明確に向けられています。つまり、WIZEは今回の資金調達によって、暗号資産トレジャリー企業としての性格をさらに強めようとしていると読むことができます。
今後の焦点は、EVO FUNDによる行使の進捗、株式売却による需給影響、ソラナ取得の実行状況、ステーキング収益、そして上場維持基準への適合です。
WIZE案件は、EVO FUND投資先一覧の中でも、暗号資産トレジャリー型ファイナンスの代表的な事例として継続的に追う価値があります。
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外部参照
本記事は、公開されている適時開示資料をもとに、資本政策・第三者割当増資・MSワラント型ファイナンスの観点から整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。









