FDK株式会社(証券コード:6955、東証スタンダード)は2026年8月26日16時30分、筆頭株主のSILITECH TECHNOLOGY CORPORATIONを割当先として、第1回無担保転換社債型新株予約権付社債を発行すると公表しました。発行総額は25億円、差引手取概算額は24億2,000万円です。
本件で特に重要なのは、割当先が新規の金融投資家ではなく、すでにFDK株15,527,400株、議決権比率45.08%を保有する筆頭株主である点です。CBが全て転換された場合、SILITECHの議決権比率は最大52.04%となり得るため、資金調達と支配関係の変化を一体で読む必要があります。
この記事のポイント
- 発行総額25億円、差引手取概算額24億2,000万円
- 割当先は議決権45.08%を持つ筆頭株主SILITECH
- 当初転換価額・下限転換価額はいずれも500円
- 最大潜在株式数は5,000,000株、希薄化率は14.48%
- 全転換時のSILITECHの議決権比率は最大52.04%
- 資金使途は新規ビジネス開拓と新電池の事業化
FDKの資金調達概要
| 会社名 | FDK株式会社 |
|---|---|
| 証券コード | 6955 |
| 市場 | 東証スタンダード |
| 開示日時 | 2026年8月26日16時30分 |
| 資金調達手法 | 第三者割当による第1回無担保転換社債型新株予約権付社債(転換価額修正条項付) |
| 割当先 | SILITECH TECHNOLOGY CORPORATION |
| 発行総額 | 2,500,000,000円 |
| 差引手取概算額 | 2,420,000,000円 |
| 当初転換価額 | 500円 |
| 下限転換価額 | 500円 |
| 最大潜在株式数 | 5,000,000株 |
| 最大希薄化率 | 14.48%(発行済株式数ベース) |
| 利率 | 年0.3% |
| 払込期日 | 2026年9月11日 |
| 償還期日 | 2031年9月11日 |
CBは発行時に25億円が一括で払い込まれるため、ワラントのように行使を待たなければ資金が入らない仕組みではありません。一方、将来CBが普通株式へ転換されれば、その時点で新株発行による希薄化が発生します。
転換価額修正条項付CBとは
転換社債型新株予約権付社債(CB)は、社債として利息と償還期限を持ちながら、保有者が一定の条件で普通株式へ転換できる金融商品です。本件では転換価額に修正条項が付いています。
転換価額は、転換請求日までの1か月間におけるFDK株の終値平均の90%に相当する金額へ修正されます。ただし、下限転換価額は500円です。当初転換価額も500円なので、株価が下落しても転換価額が500円を下回ることはありません。
反対に、基準となる価格が500円を上回れば転換価額も上方修正されます。つまり、株価上昇時には1株当たりの転換価額が上がり、同じ25億円を株式へ転換する際に発行される株数が減少します。転換価額500円で全額転換した場合の5,000,000株が最大潜在株式数となります。
通常のMSワラントとの違い
本件は株価に応じて転換価額が修正されるため、広い意味ではMSCBに該当する設計です。ただし、一般的なMSワラントとは資金の入り方が異なります。MSワラントは新株予約権の行使ごとに会社へ資金が入るのに対し、本件CBでは払込期日に25億円が一括調達されます。
また、下限転換価額が当初転換価額と同じ500円に設定されているため、株価下落に合わせて転換価額が際限なく下がり、潜在株式数が増える構造ではありません。MSワラントの基本的な仕組みは、MSワラントとは?株価下落・希薄化リスク・第三者割当との違いを解説で整理しています。
最大希薄化率は14.48%
転換価額500円で25億円全額が普通株式へ転換された場合、交付される株式数は最大5,000,000株です。2026年6月30日現在の発行済株式総数34,536,302株を基準に計算すると、希薄化率は14.48%となります。
5,000,000株 ÷ 34,536,302株 × 100 = 約14.48%
議決権ベースでは14.52%です。発行済株式数を分母にする計算と、総議決権数を分母にする計算では数値がわずかに異なるため、記事や開示を比較するときは何を分母にしているかを確認する必要があります。計算方法は希薄化率の計算方法を解説|第三者割当増資で何%薄まるのか?も参照してください。
SILITECHはすでにFDKの議決権45.08%を保有
SILITECHは台湾・新北市に本拠を置く企業で、2025年2月に実施したFDK株式への公開買付けを経て筆頭株主となりました。開示日時点の保有株式数は15,527,400株で、総議決権数に対する割合は45.08%です。SILITECHの社長はFDKの取締役を兼任し、両社は販売、調達・製造体制、製品開発などで協業しています。
この45.08%は、ワラントやCBの潜在株式を含むEDINET上の「株券等保有割合」ではなく、現に保有するFDK普通株式に基づく議決権比率です。ここへCBの最大潜在株式5,000,000株が加わる可能性があります。
| 現在 | CB全転換後の最大 | |
|---|---|---|
| 保有普通株式 | 15,527,400株 | 20,527,400株 |
| 議決権数 | 155,274個 | 205,274個 |
| 議決権比率 | 45.08% | 52.04% |
全転換後には議決権比率が過半数を超える可能性があるため、SILITECHは会社法上の特定引受人に該当します。FDKにとって本件は、筆頭株主から資金を受け入れるだけでなく、資本関係をさらに強化する取引です。
転換は払込期日から9か月間制限
FDKとSILITECHの引受契約では、原則として払込期日から9か月以内はCBを普通株式へ転換できないと定めています。この転換制限により、25億円の調達直後に最大5,000,000株の希薄化が一度に生じることは抑えられます。
さらに、1暦月に転換できる数量には、上場株式数の10%を超えないための制限があります。ただし、9か月経過後に転換が始まる可能性は残るため、転換制限期間の終了時期、株価水準、実際の転換状況を継続して確認する必要があります。
調達資金24億2,000万円の使途
| 具体的な資金使途 | 金額 | 支出予定時期 |
|---|---|---|
| 新規ビジネス開拓に向けた成長投資 | 19億2,000万円 | 2026年10月~2028年3月 |
| 新電池の事業化に向けた設備投資 | 5億円 | 2026年10月~2027年12月 |
| 合計 | 24億2,000万円 | ― |
新規ビジネス開拓に19億2,000万円
FDKはM&Aやアライアンスを活用し、新技術や顧客基盤の獲得、新市場・新事業領域の開拓を進める方針です。出資金、株式取得対価、デューデリジェンス費用、仲介手数料などに19億2,000万円を充当します。
ニッケル亜鉛電池の事業化に5億円
残る5億円は、ニッケル亜鉛電池の量産設備、建屋改修、関連設備の整備に使われます。FDKは電源バックアップ、電動モビリティー、エンジン始動などの用途を想定しており、サンプル出荷から量産体制の構築へ進むための投資です。
PIPESとして注目すべきポイント
1.金融投資家ではなく支配的大株主への割当
EVO FUNDなどの金融投資家を割当先とするPIPESでは、転換・行使後の市場売却が主要な論点になります。本件の割当先は事業上の協業関係を持つ筆頭株主であり、保有目的とガバナンスへの影響をより重視して読むべき案件です。
2.下方修正による潜在株式増加を抑えた設計
転換価額は修正されますが、500円を下回りません。そのため、株価下落時に転換価額が下がり続け、潜在株式数が5,000,000株を超えて膨らむことはありません。一方、株価が500円を下回る局面では転換が進みにくくなり、満期償還の可能性が高まります。
3.全転換時には議決権の過半数を超える可能性
SILITECHの現在の議決権比率45.08%に対し、全転換後の最大比率は52.04%です。希薄化率14.48%だけを見て終えると、本件最大の特徴である支配関係の変化を見落とします。
4.資金は先に入り、希薄化は後から発生する
FDKは払込期日に資金を一括で確保できますが、株主の希薄化はCBが転換された時点で発生します。「調達の完了」と「株式への転換」を分けて追跡することが重要です。PIPESの基本概念はPIPESとは?投資・金融での意味をわかりやすく解説で解説しています。
今後確認すべき開示
- 2026年9月11日の払込み完了
- 払込期日から9か月後の転換制限終了
- 転換価額の修正とCBの転換状況
- SILITECHの議決権比率と親会社・支配株主区分の変化
- M&A・アライアンスの具体的な投資先
- ニッケル亜鉛電池の量産設備と事業化の進捗
- 満期まで未転換となった場合の償還負担
まとめ
FDKは、筆頭株主SILITECHを割当先として、発行総額25億円の転換価額修正条項付CBを発行します。当初転換価額と下限転換価額はいずれも500円、最大潜在株式数は5,000,000株、発行済株式数ベースの最大希薄化率は14.48%です。
最大の注目点は、SILITECHがすでにFDKの議決権45.08%を保有しており、全転換時には最大52.04%へ上昇し得ることです。本件は24億2,000万円の成長資金を確保するファイナンスであると同時に、筆頭株主との資本・協業関係をさらに深めるPIPESです。
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一次資料:FDK「第三者割当により発行される第1回無担保転換社債型新株予約権付社債(転換価額修正条項付)の募集に関するお知らせ」
本記事はFDKの適時開示資料を基に資本政策の仕組みを整理したもので、特定銘柄の売買や投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。










