PIPEs・資本戦略レポート

ANAPが希薄化274.97%の大型資本再編|EVO FUND向けMSワラントを固定型へ変更

ANAPホールディングスがEVO FUND向けMSワラントを再編し希薄化率274.97%となる大型資本政策

株式会社ANAPホールディングス(3189・東証スタンダード)は2026年8月24日9時15分、第三者割当による普通株式、A種種類株式、第11回新株予約権、第12回新株予約権の発行と、既存の第9回新株予約権の取得・消却を発表しました。

今回の資本政策は、単に新しい株式や新株予約権を追加発行するものではありません。

既存のEVO FUND向けMSワラントを整理し、約76億円の債務をDESによって資本へ振り替えたうえで、行使価額を50円に固定した新株予約権へ再構築する大型の財務再編です。

普通株式と新株予約権を合計した新規発行可能株式数は126,500,000株。会社開示による最大希薄化率は274.97%に達します。

ただし、普通株式とA種種類株式はDESによって発行されるため、約76億円が新たな現金としてANAPホールディングスへ入るわけではありません。新規の現金調達に相当するのは、主に第11回・第12回新株予約権の行使による差引手取概算額約26億5,200万円です。

この記事のポイント

  • 普通株式72,000,000株を1株50円で発行
  • A種種類株式10,000,000株を1株400円で発行
  • 普通株式とA種種類株式による約76億円分はDES
  • 第11回・第12回新株予約権の潜在株式は合計54,500,000株
  • 第12回35,500,000株分の割当先はEVO FUND
  • 第11回・第12回の行使価額はいずれも50円の固定型
  • 今回の開示希薄化率は274.97%
  • 過去6カ月以内に行使された第9回分を含めると296.34%
  • 2026年9月29日の臨時株主総会による特別決議が実施条件

ANAPホールディングスの大型資本再編の概要

項目 内容
会社名 株式会社ANAPホールディングス
証券コード 3189
市場 東証スタンダード
取締役会決議日 2026年8月21日
適時開示日時 2026年8月24日9時15分
発行方法 第三者割当
発行証券 普通株式、A種種類株式、第11回・第12回新株予約権
普通株式 72,000,000株
新株予約権の潜在株式 54,500,000株
合計普通株式数 126,500,000株
A種種類株式 10,000,000株
ワラントの差引手取概算額 2,651,905,450円
最大希薄化率 274.97%
議決権ベース希薄化率 277.10%
払込・割当予定日 2026年9月30日

今回の資本再編は、2026年9月29日に開催予定の臨時株主総会で、大規模希薄化、有利発行、発行可能株式総数の増加、A種種類株式の新設などが特別決議によって承認されることを条件としています。

したがって、2026年8月24日の発表時点では実施が確定したわけではありません。臨時株主総会で必要な議案が承認されなかった場合、今回の第三者割当は実施されません。

普通株式72,000,000株は36億円分のDES

ANAPホールディングスは、普通株式72,000,000株を1株50円で発行します。

割当予定先 割当株式数 DES対象額
ネットプライス事業再生合同会社 37,000,000株 18億5,000万円
合同会社四谷デジタルイノベーターズ 35,000,000株 17億5,000万円
合計 72,000,000株 36億円

この36億円は、割当予定先がANAPホールディングスに対して保有する貸付金債権を現物出資するDES(デット・エクイティ・スワップ)です。

DESとは、企業が負っている債務を株式へ振り替える財務再編手法です。会社に新しい現金が入るわけではありませんが、貸付金が資本へ移るため、有利子負債の圧縮と自己資本の増強につながります。

A種種類株式によって40億円の債務を資本化

ANAPホールディングスは、ネットプライス事業再生合同会社に対してA種種類株式10,000,000株を発行します。

項目 条件
発行株式数 10,000,000株
発行価額 1株400円
発行総額 40億円
割当予定先 ネットプライス事業再生合同会社
払込方法 貸付金債権の現物出資によるDES
議決権 原則として議決権なし
優先配当 普通株式に優先し、年率2.0%相当額を上限

A種種類株式についても、40億円が現金で払い込まれるのではありません。ネットプライスが保有するANAPホールディングスへの貸付金債権40億円を、A種種類株式へ振り替えます。

普通株式による36億円とA種種類株式による40億円を合計すると、今回のDES対象額は約76億円です。

A種種類株式には原則として株主総会での議決権がありません。一方で、普通株式に優先して年率2.0%相当額を上限とする配当を受ける権利が設定されています。

第11回新株予約権はGADへ割当

項目 第11回新株予約権
割当予定先 GAD有限責任事業組合
新株予約権数 190,000個
潜在株式数 19,000,000株
行使価額 1株50円
行使による調達額 9億5,000万円
権利行使期間 2026年10月1日~2028年10月2日

第11回新株予約権は、GAD有限責任事業組合へ割り当てられます。潜在株式数は19,000,000株、行使価額は1株50円です。

第12回新株予約権35,500,000株分はEVO FUNDへ割当

項目 第12回新株予約権
割当予定先 EVO FUND
新株予約権数 355,000個
潜在株式数 35,500,000株
行使価額 1株50円
行使による調達額 17億7,500万円
権利行使期間 2026年10月1日~2028年10月2日

第12回新株予約権の割当予定先はEVO FUNDです。潜在株式数は35,500,000株で、今回発行する新株予約権全体の約65%を占めます。

EVO FUNDは、日本の上場企業が実施する第三者割当、新株予約権、転換社債型新株予約権付社債などに繰り返し登場する投資ファンドです。

新しい第11回・第12回はMSワラントではない

今回の第11回・第12回新株予約権は、いずれも行使価額が1株50円に設定された固定行使価額型です。

株価の変動に応じて行使価額が継続的に修正される、一般的なMSワラントとは仕組みが異なります。

ANAPホールディングスは、当初、既存の第9回新株予約権を取得・消却したうえで、下限行使価額を引き下げた新しいMSワラントへ借り換える提案を受けていました。

しかし、過去のMSワラントでは株価下落によって想定していた資金調達が進まなかったため、再びMSワラントを発行するのではなく、DES、種類株式、固定行使価額型新株予約権を組み合わせるスキームへ変更したと説明しています。

MSワラントの仕組みについては、以下の記事で詳しく解説しています。

MSワラントとは?株価下落・希薄化リスク・第三者割当との違いを解説

なぜ第9回MSワラントを取得・消却するのか

ANAPホールディングスは2026年3月30日、EVO FUNDを割当先として第9回新株予約権を発行していました。

項目 第9回新株予約権
当初発行数 500,000個
当初潜在株式数 50,000,000株
2026年8月20日までの行使数 24,799個
行使済株式数 2,479,900株
残存新株予約権 475,201個
残存潜在株式数 47,520,100株
取得・消却予定日 2026年9月7日

第9回新株予約権の下限行使価額は115円でした。しかし、ANAPホールディングスの株価が115円を下回る水準まで下落したことで行使が進まず、予定していた資金を調達できない状態になっていました。

第9回新株予約権による当初の資金使途は合計約114億5,800万円でしたが、2026年8月21日時点の実際の調達額は約3億6,600万円、充当額は約3億円にとどまっています。

そこで、残存する第9回新株予約権47,520,100株分を取得・消却し、行使価額50円の第11回・第12回新株予約権へ再構築することになりました。

行使価額50円は市場株価から大幅なディスカウント

普通株式の発行価額と第11回・第12回新株予約権の行使価額は、いずれも1株50円です。

50円は、取締役会決議日の直前取引日である2026年8月20日の終値113円に対して、約55.8%のディスカウントとなります。

比較対象 株価 50円のディスカウント率
直前取引日終値 113円 55.8%
直近1カ月平均 103円 51.5%
直近3カ月平均 107円 53.3%
直近6カ月平均 147円 66.0%

会社は、普通株式と新株予約権について、割当予定先に特に有利な条件である「有利発行」に該当すると判断しています。

そのため、発行の実施には、2026年9月29日の臨時株主総会における特別決議が必要です。

最大希薄化率は274.97%

今回発行される普通株式と、新株予約権がすべて行使された場合の潜在株式は次のとおりです。

区分 増加する普通株式数
第三者割当普通株式 72,000,000株
第11回新株予約権 19,000,000株
第12回新株予約権 35,500,000株
合計 126,500,000株

2026年8月4日時点の発行済普通株式数46,004,300株に対し、新規発行可能株式数126,500,000株を比較すると、希薄化率は274.97%です。

126,500,000株 ÷ 46,004,300株 × 100=約274.97%

議決権ベースの希薄化率は277.10%です。

希薄化率の計算方法や、発行前基準と発行後基準の違いについては、以下の記事で整理しています。

希薄化率の計算方法を解説|第三者割当増資で何%薄まるのか?

過去6カ月以内の第9回行使分を含めると296.34%

今回の開示では、東京証券取引所の大規模な第三者割当に関する考え方に基づき、過去6カ月以内に実施された第9回新株予約権の行使分も加えた希薄化率が示されています。

第9回新株予約権では、すでに2,479,900株が発行されています。この行使済み株式と今回の126,500,000株を合算し、過去6カ月以内の発行分を控除した基準株式数と比較した希薄化率は296.34%です。

議決権ベースでは298.76%となります。

したがって、今回の記事で基本となる希薄化率は会社が示した274.97%ですが、直近の資本政策を連続して見る場合には、約296%の希薄化が発生する計算も見逃せません。

ワラントによる現金調達は約26億5,200万円

第11回・第12回新株予約権がすべて行使された場合の払込総額は約27億2,500万円です。

区分 金額
第11回新株予約権の行使代金 9億5,000万円
第12回新株予約権の行使代金 17億7,500万円
新株予約権発行代金 5,450円
払込金額合計 2,725,005,450円
発行諸費用 73,100,000円
差引手取概算額 2,651,905,450円

普通株式とA種種類株式による約76億円はDESであり、現金による払込みではありません。

つまり、今回の資本政策は、約76億円の債務圧縮と、約26億5,200万円の段階的な現金調達を組み合わせたスキームです。

調達資金の使途

資金使途 金額 支出予定時期
第8回無担保普通社債の償還 8億円 2026年10月~2027年6月
ネットプライスへの長期借入金返済 9億7,500万円 2026年10月~2027年8月
ANAPホールディングスの運転資金 4億円 2026年10月~2028年8月
子会社ANAPの運転資金 3億5,000万円 2026年10月~2028年8月
子会社AELの運転資金 1億円 2026年10月~2028年8月
ANAPライトニングキャピタルの運転資金 2,700万円 2026年10月~2028年8月
合計 26億5,200万円

資金使途の約67%は、社債償還と借入金返済です。今回の現金調達は、成長投資だけでなく、既存債務の返済と当面の運転資金確保という性格が強いといえます。

ANAPホールディングスはなぜ大型希薄化を選んだのか

ANAPホールディングスは、2025年8月期まで7期連続で営業キャッシュ・フローが赤字となり、2026年8月期第3四半期でも営業赤字が継続しています。

また、2026年7月31日時点の有利子負債は約102億円に達しています。会社は、有効な資金確保と財務再構築を行わなければ、運転資金や事業資金が枯渇し、事業継続性に重大な懸念が生じるリスクが極めて高いと説明しています。

会社は保有するビットコインの一部売却も検討しましたが、将来の事業機会を失う可能性などを理由に、現時点ではビットコイン売却ではなく第三者割当を選択しています。

希薄化率274.97%という極めて大きな負担を既存株主に求める一方で、約76億円の債務を資本へ振り替え、事業継続に必要な現金を確保することを優先した判断です。

PIPESとして注目すべき4つのポイント

1.旧MSワラントが機能せず固定型へ再編された

第9回MSワラントは、株価が下限行使価額を下回ったことで行使が進みませんでした。そこで残存分を消却し、行使価額を50円に固定した新ワラントへ切り替えています。

MSワラントの下限行使価額を引き下げるだけでなく、固定型へ設計そのものを変更した点が最大の特徴です。

2.現金調達と財務再編を同時に行う

約26.52億円のワラントによる資金調達だけでなく、普通株式とA種種類株式を使って約76億円の債務を資本化します。

今回の案件は、単なる資金調達よりも「債務超過リスクを抑えるための財務再編」として見る必要があります。

3.行使価額50円は大幅なディスカウント

行使価額50円は、直前終値113円から55.8%低い水準です。固定型であっても、市場株価に対して大幅なディスカウントが設定されているため、株価が50円を上回る局面では行使と取得株式の売却が進む可能性があります。

4.EVO FUNDとGADは短期保有方針

会社開示では、EVO FUNDとGADの普通株式に対する保有方針は短期保有目的とされています。

新株予約権の行使によって取得した普通株式が市場で売却された場合、既存株主は希薄化だけでなく、株式需給への影響にも注意する必要があります。

既存株主が確認すべき今後の日程

日程 予定
2026年9月7日 第9回新株予約権の取得・消却予定
2026年9月29日 臨時株主総会開催予定
2026年9月30日 普通株式・A種種類株式の払込、第11回・第12回の割当予定
2026年10月1日 第11回・第12回新株予約権の行使期間開始
2028年10月2日 第11回・第12回新株予約権の行使期間終了

まず重要なのは、2026年9月29日の臨時株主総会です。大規模希薄化、有利発行、定款変更、A種種類株式の新設などが承認されるかを確認する必要があります。

承認された場合は、10月1日以降の新株予約権の行使状況、EVO FUNDなどの大量保有報告書、月間行使状況、普通株式の市場売却動向が次の確認ポイントとなります。

まとめ

ANAPホールディングスが発表した今回の資本政策は、希薄化率274.97%に達する大規模な第三者割当です。

しかし、その中身は単純な追加増資ではありません。

旧EVO FUND向け第9回MSワラントの取得・消却、普通株式とA種種類株式による約76億円のDES、固定行使価額型の第11回・第12回新株予約権による約26.52億円の現金調達を組み合わせた、包括的な財務再編です。

一方、行使価額50円は直前終値から約55.8%低く、普通株式とワラントによる希薄化率は274.97%、過去6カ月以内の第9回行使分を含む計算では296.34%に達します。

今回の資本再編によって有利子負債と資金繰りがどこまで改善するのか。約26.52億円のワラントが予定どおり行使されるのか。既存株主にとっては、9月29日の臨時株主総会と、10月以降の行使・売却状況を継続して確認する必要があります。


関連記事

本記事は、ANAPホールディングスが公表した適時開示資料および有価証券届出書を基に、資本政策の仕組みを整理したものです。特定銘柄の売買や投資を推奨するものではありません。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。

関連記事一覧

  1. 北浜キャピタル、PIPESによる68億円調達完了──その真の狙いとは
  2. JHDに何が起きた?
  3. マルシェとテンポスHDの第三者割当増資、希薄化率56.87%と子会社化見込みを解説する
  4. 山善がAP系ファンドへ第三者割当CBを発行した資本政策
  5. ファンペップ第三者割当増資
  6. スギホールディングスがGIC Private Limitedに約160億円の第三者割当を実施する戦略的PIPES案件
PAGE TOP
目次