PIPEs・資本戦略レポート

シンバイオ製薬がEVO FUNDから67.7億円調達|希薄化125.6%

シンバイオ製薬がEVO FUNDから67.7億円を調達、最大希薄化率125.60%の新株予約権を発行

シンバイオ製薬がEVO FUNDから67.7億円調達|希薄化125.6%の大型PIPESを解説

シンバイオ製薬株式会社(4582・東証グロース)は2026年8月17日、EVO FUNDを割当先とする第70回・第71回新株予約権(行使価額修正条項付)と、第2回無担保普通社債を組み合わせた資金調達を発表しました。

新株予約権の潜在株式数は合計9,600万株、当初行使価額は71円。新株予約権の発行・行使による差引手取概算額は約67億6,888万円です。

最大希薄化率は125.60%に達し、すべての新株予約権が行使された場合、EVO FUNDは議決権ベースで最大55.81%を保有し得る「特定引受人」に該当します。

単なるMSワラントの発行ではありません。私募社債によって開発資金を先行確保し、2段階の新株予約権によって中長期の資金需要を支える、大規模なPIPES型資金調達です。

この記事のポイント

  • 割当先はEVO FUND
  • 潜在株式数は合計9,600万株
  • 新株予約権による差引手取概算額は約67.69億円
  • 最大希薄化率は125.60%
  • EVO FUNDは議決権の最大55.81%を保有し得る
  • 最大5億円の無担保普通社債を資金の先行確保に利用
  • 調達資金の中心はブリンシドホビルの臨床開発
  • 既存の第58回・第66回・第67回新株予約権は取得・消却

シンバイオ製薬が発表した資金調達の概要

今回の資金調達では、EVO FUNDに対して第70回新株予約権と第71回新株予約権をそれぞれ48万個、合計96万個割り当てます。

項目 内容
会社名 シンバイオ製薬株式会社
証券コード 4582
市場 東証グロース
割当先 EVO FUND
新株予約権 第70回・第71回新株予約権
発行数 合計960,000個
潜在株式数 合計96,000,000株
当初行使価額 71円
下限行使価額 36円
割当日 2026年9月2日
行使期間 2026年9月3日~2029年9月3日
差引手取概算額 6,768,880,000円
最大希薄化率 125.60%
議決権ベースの希薄化率 126.32%

第70回と第71回の潜在株式数は、それぞれ4,800万株です。2回分を合計すると、2026年6月30日時点の発行済株式数7,643万4,210株を上回る9,600万株となります。

最大希薄化率125.60%とはどういう意味か

今回の最大の注目点は、発行済株式数に対する希薄化率が125.60%に達することです。

計算の基礎となる数字は次のとおりです。

  • 発行済株式数:76,434,210株
  • 新たな潜在株式数:96,000,000株
  • 希薄化率:96,000,000株÷76,434,210株=約125.60%

既存株式数に対して125.60%相当の新株が追加される可能性があるため、すべて行使された後の発行済株式数は単純計算で約1億7,243万株となります。

既存株主の持分割合は、理論上、現在の約44.33%まで低下します。言い換えると、既存株主が保有する1株当たりの議決権割合や利益の持分が大幅に薄まる可能性があります。

ただし、9,600万株が発行時に一括して交付されるわけではありません。新株予約権の行使状況、市場価格、シンバイオ製薬による行使停止や行使開始の判断によって、実際の発行株式数と調達額は変動します。

希薄化率の仕組みや計算方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

希薄化率の計算方法を解説|第三者割当増資で何%薄まるのか?

EVO FUNDが最大55.81%を保有するのか

開示資料では、すべての新株予約権が行使された場合、EVO FUNDが保有し得る議決権割合は最大55.81%とされています。

このため、EVO FUNDは会社法第244条の2第1項に定める「特定引受人」に該当します。

ただし、これはEVO FUNDが長期的に55.81%を保有し、シンバイオ製薬を連結子会社化するという意味ではありません。

シンバイオ製薬の開示では、EVO FUNDは新株予約権の行使によって取得した普通株式を随時市場で売却する予定とされています。したがって、55.81%は全株式を一時的に保有したと仮定した場合の最大値であり、実際の保有割合とは異なる可能性があります。

一方で、市場売却が進めば、新株の市場流入による株式需給への影響が生じます。投資家が確認すべきなのは、最大保有割合だけではなく、新株予約権の行使ペースと取得株式の売却動向です。

第70回と第71回は役割が異なる

今回の新株予約権は、同じ条件のものを単純に2本発行する設計ではありません。第70回と第71回では、資金調達における役割が異なります。

第70回新株予約権はコミット・イシュー

第70回新株予約権は、原則として約1年間で48万個、潜在株式4,800万株の行使を予定するコミット・イシューです。

  • 2027年3月3日までに240,000個を行使する中間コミット
  • 2027年9月3日までに480,000個すべてを行使する全部コミット

一定の条件によってコミット義務が消滅する場合はありますが、第70回はシンバイオ製薬が最初の約1年間に必要な資金を確保する中心的な枠となっています。

第71回新株予約権は補完的な資金調達枠

第71回新株予約権も潜在株式数は4,800万株ですが、シンバイオ製薬がEVO FUNDに対して行使開始を指示するまで、原則として行使できません。

第70回による資金調達の進捗や株価、市場環境を見ながら、第71回を実際に使うかどうかを会社側が判断できる設計です。

したがって、最大希薄化率125.60%は第70回と第71回がすべて行使された場合の数字です。第71回を行使させなければ、実際の希薄化は最大値より小さくなります。

行使価額は毎取引日修正される

第70回・第71回新株予約権の当初行使価額はいずれも71円です。

割当日の2取引日後に最初の修正が行われ、その後は原則として毎取引日、直前取引日の終値の100%に相当する金額へ修正されます。ただし、下限行使価額は36円です。

条件 内容
当初行使価額 71円
修正頻度 原則として毎取引日
修正後行使価額 直前取引日の終値の100%
下限行使価額 36円
上限行使価額 なし

市場価格が下落すると行使価額も下がり、同じ株数を発行しても調達できる金額が減少します。

約67.69億円という数字は、すべての新株予約権が当初行使価額71円で行使されると仮定した差引手取概算額です。将来の株価や行使状況によって、実際の調達額は増減します。

MSワラントとは?株価下落と希薄化リスクを解説

最大5億円の私募社債を組み合わせる理由

シンバイオ製薬は新株予約権と同時に、EVO FUNDとの間で最大5億円の無担保社債ファシリティを設定します。

最初に発行される第2回無担保普通社債の金額は1億円で、払込期日は2026年9月3日、償還期日は2029年9月3日、利率は年0%です。

この社債の役割は、新株予約権が行使される前に必要な資金を先行して確保することです。新株予約権の行使代金が払い込まれた後、その資金を使って社債を順次償還する仕組みになっています。

したがって、「新株予約権で約67.69億円、さらに社債で5億円、合計約72.69億円を恒久的に調達する」という単純な足し算ではありません。

社債は資金調達の時間差を埋めるブリッジファイナンスとして機能し、新株予約権による最終的なエクイティ資金へ置き換えられていく設計です。

調達資金はブリンシドホビルの開発へ

新株予約権による差引手取概算額約67.68億円の資金使途は、次のとおりです。

資金使途 金額 支出予定時期
無担保社債の償還 5億円 2026年9月~2028年3月
ブリンシドホビル開発の直接経費 45億5,400万円 2026年9月~2028年3月
ブリンシドホビル開発の間接経費 17億1,400万円 2026年9月~2028年3月
合計 67億6,800万円

資金の中心となるのは、注射剤ブリンシドホビル(IV BCV)の臨床開発です。

具体的には、造血幹細胞移植後のアデノウイルス感染症を対象とするグローバル第Ⅲ相臨床試験や、進行性多巣性白質脳症を対象とした第Ⅱ相臨床試験などに充当されます。

シンバイオ製薬は、アデノウイルス感染症を対象とした試験について、米国・欧州を中心とする80施設で180例の患者登録を計画し、EUでの新薬承認申請を2028年下半期に予定しています。

既存の新株予約権を新しいスキームへ組み替える

今回の資金調達に伴い、シンバイオ製薬は既存の第58回・第66回・第67回新株予約権を取得し、消却します。

  • 第58回新株予約権:CVI Investmentsを割当先として2022年に発行
  • 第66回・第67回新株予約権:EVO FUNDを割当先として2025年に発行

特に第66回・第67回については、株価が下限行使価額を下回ることがある状況となり、予定していた資金を適時に調達することが難しくなっていました。

そのため、残存する新株予約権を整理し、当初行使価額71円、下限行使価額36円の第70回・第71回へ事実上組み替える形です。

これは新規の資金調達であると同時に、過去に組成したエクイティファイナンスの再設計でもあります。

株価への影響をどう考えるか

今回の資金調達は、ブリンシドホビルの臨床試験を継続し、2028年の承認申請を目指すための開発資金を確保するものです。そのため、資金調達の目的自体は明確です。

一方、株主側から見ると、最大125.60%という希薄化と9,600万株の潜在株式は無視できません。

株価の下押し要因

  • 最大9,600万株の新株が発行される可能性
  • EVO FUNDが取得株式を市場で売却する予定
  • 株価下落に応じて行使価額も下方修正される
  • 行使期間中は潜在的な売り圧力が意識されやすい
  • 当初想定より調達額が減少する可能性

企業価値の上昇要因

  • 臨床試験を中断せず継続できる資金を確保できる
  • ブリンシドホビルの承認申請へ向けた財務基盤が整う
  • 第71回は会社側の指示がなければ行使を開始できない
  • 必要資金を確保できた場合、追加の希薄化を抑えられる余地がある

短期的には新株予約権の行使と株式売却による需給悪化が意識されます。しかし、中長期的な企業価値は、調達資金によって臨床開発がどこまで進み、承認申請につながるかによって決まります。

今後確認すべきポイント

今回の開示だけで資金調達が完了したわけではありません。今後は、次の動きを継続的に確認する必要があります。

  1. 2026年9月2日の新株予約権割当
  2. 9月3日以降の第70回新株予約権の行使開始
  3. 毎月の行使株数と実際の行使価額
  4. 第70回の中間コミットと全部コミットの進捗
  5. 第71回に対する行使開始指示の有無
  6. EVO FUNDの大量保有報告・変更報告
  7. ブリンシドホビルの臨床試験の進捗
  8. 実際に調達できた金額と資金使途

とくに第71回が実際に動くかどうかは、最終的な希薄化率を左右します。最大希薄化率125.60%だけを見るのではなく、第70回と第71回を分けて追跡する必要があります。

EVO FUNDとは

EVO FUNDは、上場企業が発行する新株予約権、転換社債、新株式などを引き受ける投資ファンドです。

シンバイオ製薬では過去にも第65回から第67回までの新株予約権を引き受けており、今回の第70回・第71回は継続的な資金提供関係に基づくものです。

EVO FUNDの仕組みや過去の投資先については、以下の記事で詳しく整理しています。

まとめ|開発資金確保と125.60%の希薄化をどう評価するか

シンバイオ製薬が発表した今回の資金調達は、EVO FUNDを割当先として、行使価額修正条項付新株予約権と無担保普通社債を組み合わせる大型のPIPES型ファイナンスです。

新株予約権による差引手取概算額は約67.69億円。資金の大部分は、ブリンシドホビルの臨床試験と開発体制の維持・強化に使われます。

その一方で、潜在株式数は9,600万株、最大希薄化率は125.60%に達します。すべて行使された場合には、EVO FUNDが議決権の最大55.81%を保有し得る規模です。

ただし、第71回新株予約権は会社側が行使開始を指示しなければ動かないため、最大希薄化が必ず発生するわけではありません。

今後の評価では、単に「67.7億円を調達する」「希薄化率が125.6%になる」という二つの数字だけでなく、第70回の行使状況、第71回の発動、実際の調達額、株式売却による需給、ブリンシドホビルの開発進捗を一体として追う必要があります。


※本記事は、シンバイオ製薬が2026年8月17日に公表した第三者割当による新株予約権及び無担保普通社債に関する開示資料をもとに作成しています。本記事は特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

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