Delta-Fly PharmaがEVO FUNDへ第三者割当|希薄化率75.90%の新株予約権を解説
Delta-Fly Pharma株式会社(4598・東証グロース)は2026年7月22日、EVO FUNDを割当先とする第12回新株予約権と、第3回無担保社債の発行を決議しました。
第12回新株予約権の潜在株式数は1,000万株、会社が公表した希薄化率は75.90%です。新株予約権がすべて当初行使価額127円で行使された場合の調達額は約12.71億円、差引手取概算額は約12.46億円となります。
今回の資金調達は、単にEVO FUNDへ新たな新株予約権を割り当てるだけではありません。
マッコーリー・バンク・リミテッドを割当先として発行していた第9回および第11回新株予約権について、株価が下限行使価額を下回り、当初想定した資金調達が進んでいないことから、残存分を取得・消却したうえで、EVO FUNDのスキームへ切り替える内容です。
本記事では、Delta-Fly Pharmaが実施する今回のPIPES型資金調達について、行使価額の修正方法、希薄化率、無担保社債との関係、旧ワラントを消却する理由、既存株主が確認すべきポイントを整理します。
この記事の重要ポイント
- EVO FUNDへ第12回新株予約権10万個を第三者割当
- 潜在株式数は1,000万株、希薄化率は75.90%
- 過去6カ月以内の第11回新株予約権の行使分を合算した希薄化率は99.88%
- 当初行使価額は127円、下限行使価額は64円
- 行使価額は直前3営業日の終値の最低値×100%に毎営業日修正
- 第3回無担保社債1.5億円を先に発行し、新株予約権の行使代金から償還
- 旧第9回・第11回新株予約権の残存分は取得・消却予定
- EVO FUNDは取得株式を長期保有せず、売却する方針
Delta-Fly PharmaのEVO FUND向け資金調達の概要
| 会社名 | Delta-Fly Pharma株式会社 |
|---|---|
| 証券コード | 4598・東証グロース |
| 発行決議日 | 2026年7月22日 |
| 割当先 | EVO FUND |
| 新株予約権 | 第12回新株予約権 |
| 新株予約権数 | 100,000個 |
| 潜在株式数 | 10,000,000株 |
| 割当日・払込日 | 2026年8月7日 |
| 行使期間 | 2026年8月10日~2028年8月10日 |
| 当初行使価額 | 127円 |
| 下限行使価額 | 64円 |
| 調達予定額 | 1,271,400,000円 |
| 差引手取概算額 | 1,246,400,000円 |
| 希薄化率 | 75.90%(議決権ベース75.94%) |
| 6カ月合算希薄化率 | 99.88%(議決権ベース99.94%) |
| 無担保社債 | 1.5億円・年率0.0% |
| 社債償還期日 | 2028年8月10日 |
今回発行されるのは、株式を一度に発行する第三者割当増資ではなく、EVO FUNDが段階的に行使できる行使価額修正条項付新株予約権です。
会社側は、株式を一度に発行する場合と比べて希薄化が段階的に発生することや、株価に対する一時的な影響を抑制できる点を採用理由として挙げています。
なぜ既存のマッコーリー向け新株予約権を消却するのか
今回の資金調達で特に重要なのが、既存の第9回および第11回新株予約権を取得・消却し、EVO FUNDの第12回新株予約権へ切り替える点です。
第9回新株予約権は一度も行使されていない
第9回新株予約権は、マッコーリー・バンク・リミテッドを割当先として2024年10月に発行されました。
発行された新株予約権は5,000個、潜在株式数は50万株でしたが、2026年7月22日時点までに行使された新株予約権は0個です。5,000個すべてが残存しています。
第11回新株予約権は一部行使後に停止
第11回新株予約権は2026年2月に発行され、発行総数は30,000個、潜在株式数は300万株でした。
このうち21,451個が行使され、214万5,100株が発行されています。一方、8,549個、潜在株式換算で85万4,900株が残存しています。
| 新株予約権 | 発行個数 | 行使済み | 残存個数 |
|---|---|---|---|
| 第9回 | 5,000個 | 0個 | 5,000個 |
| 第11回 | 30,000個 | 21,451個 | 8,549個 |
会社は、株価が既存新株予約権の下限行使価額を下回る状況が続き、行使が行われず、当初想定した資金調達を実現できていないと説明しています。
残存する第9回・第11回新株予約権は2026年7月29日に取得し、7月31日に消却する予定です。
つまり今回の案件は、既存ワラントを残したまま追加発行するのではなく、機能しなくなった旧スキームを整理し、EVO FUNDの新しい資金調達へ乗り換える構造です。
第12回新株予約権の行使価額は毎営業日修正される
第12回新株予約権の当初行使価額は127円です。
割当日の2営業日後に最初の修正が行われ、その後は原則として毎営業日、直前3営業日の終値のうち最も低い価格の100%に行使価額が修正されます。
修正後行使価額=直前3営業日の終値の最低値×100%
一般的な行使価額修正条項付新株予約権では、基準となる株価から数%ディスカウントした価格が行使価額になることがあります。
今回の第12回新株予約権は、参照株価に対するディスカウントを0%とする設計です。
ただし、ディスカウントがないことと、行使価額が固定されていることは同じではありません。
株価が下落すれば、直前3営業日の最低終値に連動して行使価額も下がります。下限行使価額は64円であり、株価が下限行使価額を下回って推移した場合には、新株予約権の行使が進まなくなる可能性があります。
このような行使価額修正条項付新株予約権は、一般にMSワラントと呼ばれる類型に含まれます。
希薄化率75.90%は何を意味するのか
第12回新株予約権がすべて行使された場合、新たに発行される株式数は1,000万株です。
2026年3月31日時点の発行済株式数1,317万5,000株を分母として計算した希薄化率は75.90%、議決権ベースでは75.94%です。
希薄化率の計算
10,000,000株 ÷ 13,175,000株 × 100 = 約75.90%
希薄化率75.90%は、25%を大幅に超える大規模な資金調達です。
希薄化率の意味や計算方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
東証ルール上の6カ月合算希薄化率は99.88%
今回の開示で見落としてはいけない数字が、過去6カ月以内に実施された第三者割当との合算希薄化率です。
Delta-Fly Pharmaは、2026年2月に発行した第11回新株予約権について、2026年6月末までに214万5,100株を発行しています。
会社の開示によると、この第11回新株予約権の行使分と、第12回新株予約権の潜在株式1,000万株を合算した株式数は1,214万5,100株です。
東証の6カ月合算ルールに基づいて計算した希薄化率は、株式数ベースで99.88%、議決権ベースで99.94%となります。
75.90%と99.88%の違い
75.90%は、今回発行する第12回新株予約権単体の希薄化率です。
99.88%は、過去6カ月以内に行使された第11回新株予約権の株式数を含めた、東証ルール上の合算希薄化率です。
したがって、今回の発行だけを説明する場合は75.90%、直近の一連の第三者割当を東証ルールに沿って評価する場合は99.88%となります。
東証では、短期間に複数回の第三者割当が実施された場合、原則として一体の資金調達とみなし、希薄化率を算定します。
25%ルールへの対応は第三者委員会の意見取得
東証の企業行動規範では、第三者割当による希薄化率が25%以上となる場合、原則として次のいずれかの手続きが必要です。
- 経営者から一定程度独立した者による必要性・相当性に関する意見の入手
- 株主総会決議などによる株主の意思確認
今回の希薄化率は75.90%であるため、この25%ルールの対象となります。
Delta-Fly Pharmaは、臨時株主総会を開催した場合には約2カ月を要し、開催費用も発生するとして、株主総会による意思確認ではなく、第三者委員会から意見を取得する方法を選択しました。
第三者委員会は、社外取締役である会計士2名と弁護士1名の計3名で構成され、今回の資金調達について必要性および相当性が認められるとの意見を表明しています。
1.5億円の無担保社債は先行資金
今回の資金調達では、第12回新株予約権に加えて、EVO FUNDを割当先とする第3回無担保社債1.5億円も発行されます。
| 社債総額 | 1億5,000万円 |
|---|---|
| 払込日 | 2026年7月23日 |
| 償還期日 | 2028年8月10日 |
| 利率 | 年率0.0% |
| 発行価額・償還価額 | 額面100円につき100円 |
| 担保 | 無担保 |
| 割当先 | EVO FUND |
この社債は、新株予約権の行使が始まる前に、研究開発費を先行して確保するためのブリッジ資金として機能します。
その後、第12回新株予約権が行使される都度、行使によって払い込まれた資金から社債を繰上償還する設計です。
したがって、約12.71億円の新株予約権と1.5億円の社債を単純に合計し、「約14.21億円を恒久的に調達する」と理解するのは正確ではありません。
社債1.5億円は先に受け取る資金ですが、後に新株予約権の行使代金から返済されます。
調達資金はがん治療薬の臨床試験に充当
第12回新株予約権による差引手取概算額約12.46億円は、次の用途に充当される予定です。
| 資金使途 | 金額 | 支出予定時期 |
|---|---|---|
| 第3回無担保社債の償還 | 1億5,000万円 | 2026年8月~2028年8月 |
| DFP-10917+VEN併用の臨床第1/2相試験および第3相試験 | 6億円 | 2026年12月~2028年7月 |
| DFP-14323の臨床第3相試験 | 3億2,600万円 | 2027年2月~2028年5月 |
| DFP-11207の胆道がんに対する医師主導治験 | 5,000万円 | 2027年4月~2029年3月期 |
| その他パイプライン、開発・管理体制、特許関連費用 | 1億2,000万円 | 2026年8月~2027年3月 |
| 合計 | 12億4,600万円 | ― |
説明資料では、DFP-10917+VEN併用試験に対する資金として7億5,000万円が示されています。
これは、無担保社債から先に充当される1億5,000万円と、新株予約権の手取資金から直接充当される6億円を合わせた金額です。
EVO FUNDは株式を長期保有しない
会社の開示によると、EVO FUNDによる新株予約権の保有目的は純投資です。
EVO FUNDは、新株予約権を行使して取得した株式を長期間保有するのではなく、売却する方針とされています。
また、行使によって取得した株式を売却して資金を回収し、再び新株予約権を行使するという行為を繰り返すことが予定されています。
この構造では、EVO FUNDが経営支配や長期的な事業提携を目的として大株主になることよりも、市場の流動性を利用しながら新株予約権の行使を進めることが想定されています。
EVO FUNDの投資手法については、次の記事でも詳しく解説しています。
役員からEVO FUNDへ最大50万株を貸し出す予定
第12回新株予約権の発行に伴い、EVO FUNDはDelta-Fly Pharmaの代表取締役および取締役との間で株券貸借契約を締結する予定です。
| 貸株人 | 貸借株数上限 | 貸株期間 |
|---|---|---|
| 代表取締役社長 江島淸氏 | 415,000株 | 2026年7月23日~2028年8月18日 |
| 取締役 飯塚健蔵氏 | 85,000株 | 2026年7月23日~2028年8月18日 |
| 合計 | 500,000株 | ― |
貸株利率はいずれも0.0%、担保はありません。
株券貸借契約が存在することだけで、50万株すべてが実際に空売りされる、または市場で売却されると断定することはできません。
一方、行使価額修正条項付新株予約権の実行過程を確認するうえでは、貸株残高、空売り残高、新株予約権の月間行使状況を継続して確認する必要があります。
今回の資金調達のメリット
1.社債により1.5億円を直ちに確保できる
新株予約権は、投資家が実際に行使しなければ会社へ資金が入りません。
今回のスキームでは、無担保社債1.5億円を先に発行するため、新株予約権の行使開始を待たずに一定の研究開発資金を確保できます。
2.行使価額にディスカウントがない
行使価額は直前3営業日の最低終値の100%であり、参照株価からのディスカウントは設定されていません。
同じ株価水準であれば、ディスカウント付きの新株予約権よりも、会社が1株当たりに受け取る資金は多くなります。
3.希薄化が一度に発生しない
普通株式1,000万株を一度に発行するのではなく、新株予約権の行使に応じて段階的に新株が発行されます。
会社は、資金需要が後退した場合や、より有利な資金調達方法が利用可能になった場合、残存する新株予約権を取得できる条項も設けています。
既存株主が注意すべきリスク
1.75.90%という大規模な潜在希薄化
第12回新株予約権単体でも希薄化率は75.90%です。
新株予約権がすべて行使された場合、発行済株式数は大幅に増加し、既存株主の1株当たり利益や議決権比率には希薄化の影響が生じます。
2.6カ月合算では99.88%
東証の6カ月合算ルールでは、第11回新株予約権の行使分を含む希薄化率が99.88%となります。
今回の資金調達だけでなく、直近に実施された一連の資本政策を合わせて確認する必要があります。
3.行使と売却による需給への影響
EVO FUNDは取得株式を長期保有せず、売却する方針です。
新株予約権の行使が進む局面では、新たに発行された株式が市場で売却され、株式需給に影響する可能性があります。
4.調達額は約12.71億円で確定していない
約12.71億円という金額は、1,000万株すべてが当初行使価額127円で行使された場合の金額です。
行使価額が下がれば実際の調達額も減少します。また、株価が下限行使価額を下回り、行使が進まなければ、予定した資金を調達できない可能性があります。
旧第9回・第11回新株予約権が想定どおり進まなかったことを考えると、発行条件だけでなく、実際の行使実績を追跡することが重要です。
今後確認すべき5つのポイント
- 第12回新株予約権の月間行使状況
- 株価が下限行使価額64円を上回って推移するか
- 実際の行使価額と調達金額
- 第3回無担保社債の償還状況
- DFP-10917+VEN、DFP-14323などの臨床試験の進捗
今回の資金調達が企業価値向上につながるかは、資金を調達できたかだけでは判断できません。
新株予約権の行使によって生じる希薄化や株式需給への影響と、調達した資金によって臨床試験がどこまで前進したかをセットで確認する必要があります。
まとめ|旧ワラントを整理してEVO FUND型へ切り替え
Delta-Fly Pharmaは、マッコーリー・バンク・リミテッドを割当先とする第9回・第11回新株予約権の残存分を取得・消却し、EVO FUNDを割当先とする第12回新株予約権へ切り替えます。
第12回新株予約権の潜在株式数は1,000万株、希薄化率は75.90%です。過去6カ月以内の第11回新株予約権の行使分を合算すると、東証ルール上の希薄化率は99.88%となります。
行使価額にディスカウントはありませんが、行使価額は直前3営業日の最低終値に応じて毎営業日修正されます。また、EVO FUNDは取得株式を長期保有せず、行使と売却を繰り返す方針です。
一方、会社にとっては、無担保社債によって1.5億円を先に確保し、がん治療薬の臨床試験を継続するための資金調達手段となります。
今回の案件は、単なるEVO FUNDへの第三者割当ではありません。
既存ワラントによる調達が止まった創薬ベンチャーが、旧スキームを消却し、大規模なEVO FUND型ファイナンスへ乗り換えた事例として、今後の行使状況まで継続して追跡する必要があります。
参考資料
- Delta-Fly Pharma「第12回新株予約権及び第3回無担保社債の発行に関するお知らせ」
- Delta-Fly Pharma「第12回新株予約権及び第3回無担保社債発行に関する説明資料」
- Delta-Fly Pharma「第9回及び第11回新株予約権の取得及び消却に関するお知らせ」
- 日本取引所グループ「第三者割当に係る上場制度の概要及び実務上の留意事項」
本記事は、公開された適時開示資料等をもとに資金調達スキームを整理したものであり、特定銘柄の売買や投資を推奨するものではありません。投資判断は最新の開示資料をご確認のうえ、ご自身の責任で行ってください。









